承継円滑化法とは、主に中小企業を対象として、円滑な事業承継をサポートするための支援策として成立した法律です。
近年では、事業承継の失敗による中小企業の廃業が増加傾向にあります。
この課題を解決する糸口になるとして注目を集めています。
承継円滑化法の解説
主に中小企業の経営者が、事業の引継ぎをスムーズに実施できるよう、2008年に制定された法律です。
中小企業の事業承継には、遺留分により経営の安定性が損なわれたり、相続税や贈与税の負担が大きくなったりするといった問題がありました。
このような問題を解決するために、遺留分放棄の法的確定にかかる家庭裁判所の申請手続きを単独で行える制度や、税に関する猶予制度が設けられました。
これまでは親族内での事業承継が中心でしたが、近年では親族外での承継が増加傾向にあります。
このような事情を背景として2018年には大幅な改正が行われました。
改正後のポイント
特例措置
後継者が取得した全ての非上場株式に対する課税額について、後継者が死亡する日まで納税を猶予するという内容です。
これにより、納税額に関する後継者の負担は実質的になくなります。
また、以前なら後継者は1名のみを想定していましたが、最大3名への承継が可能となりました。
金融支援制度
元々、相続税の支払いや株式買い取りをサポートする資金調達支援制度が存在しており、承継者は一部の金融支援を受けられました。
今回の法律改正では、中小機構からの共済や貸付けも受けられるよう変更が加えられました。
民法特例
現経営者の生前に後継者が他の相続人全員との合意を得た上で所定の手続きを行うことで、適用を受けられます。
生前に贈与された株式などを遺留分の対象から除外するものと、生前贈与株式などの評価額を事前に固定する方法に分けられます。
承継円滑化法を活用する利点
資金繰りが容易になる
都道府県知事の許可があれば、融資が受けられます。
資金が乏しい中小企業にとって、承継時の資金繰りが容易になることは大きなメリットです。
また先述のように、税金負担を大幅に軽減できるのも嬉しいポイントです。
優先的に株式を取得できる
民法の特例を活用すれば、承継者が優先的に株式を取得できます。
この結果、親族からの減殺請求などで経済的な負担を抱える心配が少なくなります。
要点のおさらい
- 承継円滑化法とは、主に中小企業を対象として、後継者への事業承継を円滑に進めるために制定された法律です。
- 2018年の改正により、税制の特例措置、金融支援制度の拡充、遺留分に関する民法特例が制定されました。
- 資金繰りが容易になるとともに、後継者が優先的に株式を取得できる点がメリットとして挙げられます。