類似取引比準法とは、M&Aのプロセスにおいて企業を評価するために用いられる手法の一つです。
買収対象の企業と類似している上場企業のM&A事例における取引額を用いて利益倍率を算出し、その値をベースにして買い取り価格を決定します。
類似取引比準法の解説
M&Aの取引において、買い取り価格は重要なポイントです。
買い取り価格を決定するためには、様々な角度から企業の評価が行われます。
類似取引比準法とは企業を評価する際に用いられる手段の一つです。
まず、買い取り対象の企業と事業の内容や規模が近い企業を複数選出します。
それらの企業が実際にいくらで売買されたのかを元に利益倍率を求め、算出された値に比準して買い取り価格を決めます。
このやり方は、「よく似た企業のM&Aの事例が存在すること」
「上場企業であること」「財務上の数値が公表されていること」という3種類の条件が揃った場合のみ実施できます。
類似取引比準法との注意点
適切な買い取り価格を求められるとは限らない
企業を買収する際に、時間の短縮や競合との入札競争に勝つことを狙いとして、
買い取り価格に上乗せして支払われる金額のことを買収プレミアムと呼びます。
買収プレミアムの分が加味されている分買い取り価格が高くなっており、適正な評価を行えているとは言えないケースも見られます。
類似会社が少ない場合は利用を避ける
通常、三社から十社ほどの類似会社を選びます。
数が足りなければある程度正確な数値を出すのは難しいと考えられるため、
参考にできそうな会社が少ない場合にこの手法を採用することは適当ではありません。
類似会社比準法との違い
類似会社比準法とは、類似した上場企業の株価をベースに企業価値を計る方法です。
買収の対象となる企業が上場しておらず、参考にする市場価格が存在しない場合に用いられます。
具体的な手段としては、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)が利用されます。
類似取引比準法を利用して求めた価格と比較して、低い価格が算出されやすい傾向があります。
要点のおさらい
- 類似取引比準法とは、企業の買い取り価格を決定するために、類似会社のM&A事例から求めた利益倍率を用いる方法です。
- 参考にできる企業の数が不足していることや買収プレミアムの影響によって適切な価格が算出できないリスクもあります。
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類似会社比準法とは、非上場の企業が買収の対象となる際に、上場企業の株価をベースとして買い取り価格を求める手法です。