インサイダー取引とは、会社の重要情報を知る人物が、公開される前の情報を利用して株式などの有価証券を売買することを指します。
内部者取引とも呼ばれます。
金融商品取引法により規制されている違法行為であり、個人の場合は5年以下の懲役または500万円以下の罰金が課せられます。
インサイダー取引の解説
金融商品取引法によるインサイダー取引の定義は以下のようになります。「会社関係者(元会社関係者を含む)が、上場会社等の業務等に関する重要事実を、
その者の職務等に関して知りながら、その重要事実が公表される前に、当該上場会社等の株券等の売買等を行うこと」
ここでの関係者には、経営陣や社員だけでなくアルバイトやパートタイマーも含まれます。
また、重要事実とは、合併などの決定事項、上場の取り消しなどの発生事実、売上高などの決算情報が代表的な項目として挙げられます。
例えば、自分が勤めている会社が近いうちに他の会社と合併するという情報を入手したと仮定します。
その情報を元に株価が上昇することを見越して自社の株式を購入したとします。
情報が世間一般に公開される前だったとすれば、このケースもインサイダー取引にあたるのです。
この取り決めには、一般の投資家より有利な立場で取引を実施できる状況が生まれることで、市場の健全性が損なわれることを防ぐ目的があります。
インサイダー取引の実例
子会社化を知り、株を売却したケース
上場企業A社の従業員が、B社の株式を買い占める予定であることを上司とのやり取りを通じて知りました。
その後、自社の株式8600株を情報が明るみに出る前日までに購入したのです。
このケースでは、従業員に対して256万円の罰金が課せられました。
事前に入手した情報を広めたケース
上場企業C社と契約の交渉を行っていたD社の役員が、C社には業務を遂行する上で損害が生じており、その対策のための委員会が設置されていることを知りました。
その役員はC社の株主である知人二名にその旨を伝えました。
その結果、知人は31300株と2000株をそれぞれ売却したのです。
このケースでは、各々に892万円、50万円の罰金が課されました。
インサイダー取引に関する注意点
利益を得たかは無関係である
内部の者がその立場を利用して、一般公開前の情報を知った後に株を売買したと見なされれば、取り締まりの対象となります。
利益を上げたかは一切関係ないのです。
外国籍も罰則の対象になる
インサイダー取引に対する罰則は日本国内だけで適用されるわけではありません。
実際に、海外在住の人物に対して課徴金の支払いが命じられたケースがあります。
要点のおさらい
- インサイダー取引とは、公開される前の重要情報を利用して株の売買などを行う行為のことで、法律により規制されています。
- 事前に知った情報を元に自分に優位な取引を行い課徴金の支払いを命じられたケースがいくつも存在します。
- 利益を獲得したかどうかは無関係であり、日本国籍でない人物も罰則が適用される対象となる点には留意すべきです。