SPAとはStock Purchase Agreementの略で、日本語では株式譲渡契約書と訳します。
具体的には、株式を売る、買うといった売買契約を証明するための契約書のことで、主にM&Aを締結する際に利用します。
成立するには双方の合意が前提とされており、売主と買主および立会人の署名と押印が必要です。
SPAの解説
そもそも、株式譲渡とは、株式を売主から買主に移動させることで、会社の経営権を継承させる手続きのことを指します。
その際に必要となるのがSPAです。
SPAには売却価格や譲渡手段だけでなく、対価の決済方法や従業員の処遇など細かい事項が網羅されています。
SPAに記載された内容を元に株式譲渡が行われるため、M&Aの現場では最重要の契約書と言えます。
また、SPAは作成側が有利な条件を盛り込めるため、自社で作成できるよう交渉していくことをオススメします。
弁護士に契約書作成を依頼するのが一般的ですが、任せきりで安心していると思わぬところで損害を被る可能性があるため、
経営者自身が念入りに確認することが肝要です。
SPAの失敗事例
直前に条件変更を希望し、破談になったケース
A社とB社は交渉を重ねて基本合意にこぎ着けました。
しかし、A社が最終契約直前に売買価格を値上げしてほしいと契約の変更を申し出ました。
突然の条件変更にB社は不信感を持ち、M&Aを破談に終わりました。
安易に同意したSPA条項に拘束されたケース
C社の代表であるD氏は早期退職をするためにM&Aを行いました。
ところがSPAには、M&A成立後も3年間は役員として支援をすることが記載されており、
D氏は最低3年間、働き続けなければならないことになりました。
SPAの注意点
表明保証の内容を確認する
表明保証とは、売主が買主にM&Aの事項を表明し、保証することです。
表明保証に記載されている内容と差異が生じると、損害賠償を請求されることもあるため、注意が必要です。
表明保証は、買主のリスクを軽減するための一つの手段ですが、売主にとってはリスクになり得ます。
買主はどこまでが保証されているのか、売主はどこまでを保証するのかを念入りに確認するべきです。
競業避止義務に安易に同意しない
競業避止義務とは、買主が買収後の事業の利益を損ねることを防ぐため、M&Aが成立した後に売主が売却した事業に対しての競業行為を禁止することです。
とくに注意するべきことは対象者がどのように限定されているかです。
もし全従業員が対象となっている場合は、従業員や役員は再就職が難しくなるなど、将来の選択肢が制限されます。
期間は数年間が一般的ですが、10年や20年と長期にわたる契約もありえます。ただし双方の同意があれば短縮や延長も可能です。
関係者の将来を制限するものであるため、SPAを結ぶ際は安易に同意しないように注意しましょう。
要点のおさらい
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SPAはM&Aを締結する際に利用する最重要の契約書であり、経営者自身が確認し内容を把握する必要があります。
- SPAにおいては、直前での契約の変更や安易な同意は思わぬ失敗に繋がるため禁物です。
- SPAはできる限り自社で作成し、結ぶ際は表明保証と競業避止義務の内容を念入りに確認しましょう。