クロスボーダーM&Aとは、国境を越えて行われるM&Aのことです。
買い手企業もしくは売り手企業のいずれかが外国籍の企業であるケースを指します。
国内企業が海外企業を買収するIn-outと、海外企業が国内企業を買収するOut-inに分けられます。
クロスボーダーM&Aの解説
海外企業と国内企業が実施するM&AをクロスボーダーM&Aと呼びます。
少子高齢化に伴う国内市場の縮小とグローバル化を背景として広まりつつある手法です。
近年ではスタートアップやベンチャー企業によるIn-outが増加傾向にあります。
大企業だけでなく中小企業でも活発に実施されています。
対象は欧米の企業となることが多いです。
一方、Out-inの件数は減少傾向にあります。
中国の買い手企業が高額で売買を行っているケースが目立ちます。
新市場を開拓するとともに、海外の技術やノウハウを取り入れることで、大きな利益に繋がる可能性があります。
通常のM&Aとの違い
カントリーリスクがある
相手国の政治や経済面で変化が起き、それに影響を受けて取り引きを進めることが難しくなるリスクが存在します。
相手国と日本との間で問題が起き、M&Aが取り止めとなる政治リスクも考えられます。
訴訟リスクがある
日本と比較すると、海外では訴訟問題が多く発生します。
小さな問題が経営そのものに関わる大きな問題へと発展する可能性もあります。
例えば、環境に関する認識や法律は国によって大きく異なるため、訴訟に繋がりやすいです。
国内企業同士のM&Aよりもデューデリジェンスを入念に行う必要があります。
外資規制がある
外国人もしくは外国籍の企業による国内企業への投資に対しては法律により多くの規制が設けられています。
例えば、外国人や外国籍の企業が日本国内で株式の取り引きを行うためには、原則として日本銀行を経由する必要があるのです。
健全にM&Aを実施するためにも、規制に反しないかのチェックは必須だと言えます。
クロスボーダーM&Aの注意点
人的な問題が発生しやすい
失敗の要因として代表的なものがPMI(M&A実施後の統合プロセス)の失敗です。
In-out型のM&Aでは、従業員の反対により取り引きがスムーズに進められないケースが多々あります。
従業員のリストラに関する価値観が日本と海外とでは異なる点が原因だと言われています。
デューデリジェンスに多額の費用がかかる
海外とのM&Aでは伴うリスクが多いため、丁寧なデューデリジェンスが不可欠です。
ところが、通訳の雇用やその国への渡航費など国内企業同士のM&Aに比べて多額の費用がかかります。
具体的には、1.5倍から2倍ほどが目安とされます。
要点のおさらい
- クロスボーダーM&Aとは日本企業と海外企業により実施されるM&Aのことで、国内市場の縮小に伴って広まりつつある手法です。
- 実施の際はカントリーリスク、訴訟リスク、外資規制に特に注意を払う必要があります。
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人的な統合の難しさとデューデリジェンスにかかる多額の費用は念頭においておくべき項目です。