後継者不在のために黒字廃業・休業を選択する企業も多く、国の主導で事業承継を促進していこうという動きが強まっています。
優良な中小企業が廃業・休業せずに次の世代へ企業や事業を引き継いでいくために、事業承継問題の概要や解決策、活用したい制度を詳しく紹介します。
事業承継問題とは?
オーナー事業承継という言葉をよく耳にするようになったけれど、問題というとどんなものが生じているの?
編集部事業承継という言葉自体は以前から存在していましたが、取りざたされるようになったのは最近のことです。
まずは事業承継問題とは何なのか、という点から一緒に読み解いていきましょう。
同年の10月6日には大手メディア・日経新聞社も『大廃業時代の足音 中小「後継未定」127万社』という見出しで記事を掲載し、後継者不在の中小企業を始め、多くの企業に警鐘が鳴らされることになったのです。
「127万社が廃業」と経済産業省が発表
経済産業省が試算したデータでは、このまま後継者不在の中小企業が散見される状態が続けば、2025年までに127万社が廃業し、650万人もの雇用が失われるという結果になりました。その結果、22兆円のGDPが失われるとの結果も報告されたことで大きな反響を呼んだのです。
いま事業承継問題で悩んでいる企業だけでなく、日本全体に大きなダメージを与える可能性があるとして、国も本気で事業承継問題の解消に乗り出します。
その結果、後述するような事業承継を支援する様々な施策が準備され、民間や商工会、商工会議所なども協力する形で支援体制が構築されてきているのです。
後継者不在により相次ぐ黒字廃業
一般的に「廃業」と聞くと赤字廃業を想像しますが、近年は業績が良く黒字であるにも関わらず廃業を選ぶ「黒字廃業」が増加しつつあります。下図は、小規模法人や個人事業主が廃業を考えている理由をグラフ化したものです。
これによると、廃業を選ぶ理由として最も多いものは、「後継者を確保できない」というもの。
引用:廃業に関する検討状況及び課題丨中小企業庁
一般的に廃業と聞くと、赤字廃業を思い浮かべますが、実際は「業績が厳しい」という理由で廃業を考えている小規模法人や個人事業主は全体の3割程度にとどまっています。
それに対し、後継者不在を理由に廃業を検討している事業者は5割程度を占めているのです。
廃業する企業や個人事業主の背景には、深刻な事業承継問題が影を落としていることが読み取れます。
事業承継への意識不足やハードルの高さも原因の一つ
オーナー事業承継とかM&Aの説明をされても、経営者の立場からはなかなか実態が掴みづらかったり、自分事として考えにくかったりするのも、事業承継問題の理由の一つにあるのかな?
編集部おっしゃるとおりです。
他には事業承継やM&Aのハードルが高い、ということも挙げられますね。
中小企業庁のデータを用いて、詳しく見ていきましょう。
事業承継そのものが近年注目され始めたという背景もあり、企業を誰かに譲ることのイメージが分からない、という経営者の方も少なくありません。
下図は、「廃業に際して自社の事業や資産を他社に譲ることについて」小規模法人や個人事業主から得られた返答をグラフ化したものです。
「分からない」「譲りたくない」という返答が7〜8割以上を占めており、事業承継やM&Aについての周知や意識変革が必要であることを示唆しています。
引用:廃業に関する検討状況及び課題丨中小企業庁
その上、事業承継は5〜10年といった年月を要する会社の大工事であり、会社法や税制なども絡んでくる手続きです。
M&Aについても、テクニカルな分野なので、信頼できる専門家と一緒に進めていく必要があります。
こうした面から、企業を誰かに譲り渡すことにハードルの高さを感じてしまう経営者の方も多くいらっしゃるでしょう。
こうした意識不足やハードルの高さを受けて、事業承継問題の解消に向けて様々な解決策が講じられています。
事業承継問題を解消するための解決策は?
オーナー事業承継問題の深刻さは理解できたよ。解決するための施策はあるのかな?
編集部行政や民間が連携して様々な取り組みを行っていますので、いくつか代表的なものをご紹介します。
大きく「資金の不足」「相談相手の不足」「後継者の不在」が問題の核となるのですが、それらを解消する施策をジャンルごとにまとめてみましたので、一緒に見ていきましょう
資金面のハードルを解決する施策
まずは最大のネックとも言える「資金面のハードル」を解決するための施策をご紹介します。使い勝手がよい、以下の3つの施策に着目し細かく見ていきます。
- 事業承継税制
- 事業承継補助金
- 事業承継・集約・活性化支援資金
まずは事業承継税制について紹介します。
事業承継税制
事業承継税制は、事業承継時にかかる税負担を軽減し、事業承継を促進する目的で講じられた施策です。具体的には、事業承継によって後継者に株式や資産を譲り渡す際にかかる相続税や贈与税の負担を0円にできる施策ですが、後継者が引き継ぐ企業の役員として3年以上勤務していること、などの細かな条件がいくつか課せられています。
事業承継税制の活用を考えている方は、利用条件についても押さえておくことが大切です。
事業承継税制の条件や利用方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ押さえておきましょう。
関連記事:改正・事業承継税制でメリット拡大!要件をわかりやすく解説
事業承継補助金
事業承継やM&A後に革新的な取り組みを行う企業を応援する目的で設立されたのが事業承継補助金です。事業承継時に廃業を伴う場合は廃業費なども経費として認められるうえ、新体制になった後の販路拡大や新商品開発なども経費対象となるので、事業承継や第三者承継(M&A)を検討している方はぜひ活用していただきたい補助金です。
以下の記事では事業承継補助金で採択されるためのポイントや補助金額、経費項目などを詳しく解説しているので、ぜひ確認してみましょう。
事業承継やM&Aで活用できる事業承継補助金丨採択率や申請手順、使い方まで解説
事業承継・集約・活性化支援資金
日本政策金融公庫が用意している融資メニューのひとつが事業承継・集約・活性化支援資金です。現経営者と後継者が共に事業承継計画を作成している方などが貸付の対象者となります。
融資限度額は7,200万円、そのうち運転資金としての融資限度額は4,800万円と定められていますので、設備資金として借りられるのは2,400万円まで。
事業承継計画書の出来栄えや資金の使いみちによって融資が決定するか否かは変わってくるので、申し込む際は事業承継やM&Aの専門家と一緒に、事業承継後の事業計画も踏まえて準備をしておくのがよいでしょう。
相談相手がいない状況を解決する施策
事業承継問題を深刻なものにしている理由の一つは「相談相手がいない」こと。下図は、廃業を検討している小規模事業者が相談相手に誰を選ぶかをグラフ化したものです。
引用:廃業に関する検討状況及び課題丨中小企業庁
商工会や商工会議所を活用している方であれば、廃業についての専門的なアドバイスを受けられますが、そうでない方は次点の親族や友人、知人といった身近な方が相談相手となります。
しかし、身近な方は経営者の方の理解者ではありますが、企業や事業承継の専門家ではないので、詳しいアドバイスをもらうことは難しくなってしまいます。
つまり、事業承継問題を解消するためには、まず事業承継やM&Aの専門家へ相談しやすくするための環境整備が重要となります。
ここからは、事業承継問題のネックとなっている「相談相手の不足」を解決するためのプランをご紹介します。
事業承継M&Aの専門会社
事業承継やM&Aを支援している企業へ相談することで、すばやく専門家にアドバイスをもらえます。事業承継やM&Aの専門会社は豊富な実績や、譲り受け先となる企業のネットワークを持っています。
親族承継と第三者承継で迷われている場合でも相談にのってくれるアドバイザーがいます。
弊社は事業承継型M&Aを支援する国内最大級のプラットフォームを運営しておりネットワークが豊富です。
アドバイザーは親身にアドバイスしておりますので、無料相談のご依頼をいただけますと幸いです。
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商工会・商工会議所
商工会や商工会議所でも事業承継支援の施策を打ち出しています。後継者塾と銘打って後継者教育を担ったり、事業承継計画書の作成を手伝ったりといった直接的な支援を行う商工会・商工会議所も増加しているので、お近くの商工会・商工会議所へ相談してみるのもよいでしょう。
事業承継支援を行っている士業者へつないでもらう、という意味でも、商工会や商工会議所を窓口として活用するのはおすすめです。
よろず支援拠点
中小企業や起業家を支援する目的で全国に設置されているよろず支援拠点でも事業承継の相談を受け付けています。事業承継についてのライトな相談から具体的なアドバイスまで対応してもらえるので、気軽に相談してみるのもよいでしょう。
後継者不在を解消する施策
オーナー親族や従業員の中に経営を任せられる人材が居ない場合は、一気に事業承継が難しくなってしまうような気がするなぁ…
編集部そうですね。そのため近年は第三者承継、いわゆる事業承継型M&Aというものに注目が集まっています。
そのあたりも含めて、後継者不在を解消するための施策を見ていきましょう
第三者承継支援総合パッケージ
2019年に策定された第三者承継支援総合パッケージは、行政が本気で事業承継支援に乗り出すことを表明した、スローガンのような位置づけの施策です。内容には経営者保証の緩和や新たな補助金枠の創設なども盛り込まれており、事業承継型M&Aという選択肢を拡充していくことで、後継者の不在を解消し、中小企業と後継者候補のマッチングを促進してくれると期待が高まっています。
参考:第三者承継支援総合パッケージを策定しました丨経済産業省
事業承継マッチング支援
後継者候補と企業のマッチングを支援するべく、日本政策金融公庫も支援策を講じています。事業承継マッチング支援は、東京都で試行的に開始されている無料のサービスです。
事業承継の後継者になりたい方と、後継者を求めている中小企業のマッチングを公庫が行い、お互いの同意があった場合は事業承継型M&Aを進めていきます。
M&Aのアドバイザーが必要な場合は中小機構が運営する事業引継ぎ支援センターを紹介してもらえるので、ワンストップで事業承継を進められるのがメリットです。
事業引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」
先述した事業引継ぎセンターでも、後継者人材バンクというサービスを独自に提供しています。後継者候補となる人材やが数多く登録しており、自社が求める後継者を数ある候補者の中から選べるのが特徴です。
また、人材だけでなくM&Aの譲受企業も紹介してもらえるので、幅広い選択肢の中から企業の譲渡先を探せます。
事業承継の選択肢を広げつつ後継者候補を見つけられるので、ぜひ活用したい選択肢の一つです。
事業承継M&Aコンサルティング会社「株式会社アイデアルパートナーズ」
ここまで、行政が運営する事業承継マッチングについて説明してきましたが、民間の企業でも後継者とのマッチングを成立させられます。弊社は事業承継型M&Aのコンサルティング会社ですが、国内最大級のM&Aマッチングプラットフォーム「スピードM&A」も運営しているので、幅広い選択肢の中から後継者候補となる方、企業を見つけられます。
また、事業承継型M&Aのコンサルティング事業で培ったノウハウを活かして、後継者のマッチングから一歩進んだ「オーナー経営者様の利益最大化」という視点でもアドバイスやお手伝いをさせていただきます。
相談は無料ですのでお気軽にお問い合わせください。
無料相談はこちらから
事業承継問題に一人で悩まない
オーナー事業承継問題の実態や解決策がよく分かったよ、ありがとう
編集部それは良かったです!
事業承継やM&Aで分からないこと、不安なことがあれば何でも相談してくださいね。
「後継者候補が居ない」「企業を買い取ってもらえるか分からない」といった不安を一人で抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。
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