「最近、事業承継という言葉を耳にすることが増えた。でも、実際のところ事業承継って何をするの?」
「事業承継を考えているのだが、何から手を付けたら良いかわからないのが正直なところだ」
昨今、「事業承継」という言葉を本当によく耳にするようになりました。
それこそ事業承継は「2代目社長」や「M&A」という言葉に紐づけられて、業界を問わずさまざまな場所で語られています。
しかし、「そもそも事業承継とは具体的に何をすることなの?」と問われると、はっきりと答えることが難しいかもしれません。
事業承継を理解するためには法律・会計・税務といった各分野の専門知識が必要なことはもとより、あなたの会社を他の人が引き継ぐことによって起こる様々な問題を把握しなければなりません。事業承継には実に多様な側面が隠されています。
今回の記事では「点ではなく線で行う事業承継」と題して、何やら曖昧でわかりにくい事業承継の全体像を解説していきます。具体的には以下のポイントについて詳しく述べていきます。
- 事業承継を理解するポイント
- 事業承継を点ではなく線で行うということ
- 事業承継全体の流れを把握
- 事業承継において、無形資産を次の世代に引き継ぐことの難しさ
- 事業承継ができなかった場合の清算という手段
- 事業承継を成功させる5つのポイント
この記事では事業承継という抽象的な行為の全体像を把握することを目的としています。
そのため、まずはこの記事で全体像を頭に入れたうえで、細部に言及した以下の記事を読むとより深い理解ができるはずです。
事業承継における3つの方法!会社を譲る相手を決める5のポイント解説
事業承継を特集するビジネス雑誌や報道番組も増えていて、事業承継という言葉だけがひとり歩きしているかのような印象があります。
しかしこの記事を読み進めることで事業承継の大まかなイメージを頭の中に思い描くことができるようになります。
理解のポイントは事業承継を「点ではなく線でとらえる」ことです。
それではさっそく事業承継の全体像について確認していきましょう。
事業承継は点ではなく線で行う
事業承継を具体的に理解するためのポイントは「事業承継は点ではなく線で行われる」と知ることです。
それは事業承継が複数の行為をあらわす言葉であるためです。
例えば株式譲渡であれば点としてみることもできます。
なぜならば株式譲渡契約の実行こそが株式譲渡という行為であるためです。
もちろん契約実行までの交渉も株式譲渡のために必要不可欠な行為ではあるのですが、それはあくまで前置きであり株式譲渡そのものではありません。
これに対して事業承継は明確な一つの点を持たないのです。
詳しい手順は次の章で解説しますが、事業承継は承継しようとする事業および会社の状態を正確に把握することから始まり、最終的に他者に受け継がせた会社がこれまで以上に発展できる環境を構築することが求められます。
事業承継を理解するためには、事業承継を点ではなく線として理解していくことが重要となります。
しかし必ずしも「事業承継=M&A」というわけではありません。
息子さんに会社を継いでもらうかたちで事業承継を実現することもあります。
またM&Aという方法を選んだとしても、M&Aそのものの手続きとは別に、円滑な事業承継を行うためにするべきことがあるのです。
事業承継の流れ
ここでは事業承継の全体の流れについて解説します。
事業承継が点ではなく線で行うものである以上、全体の流れを知ることは非常に重要となります。
まずは図で確認してみましょう。
事業承継の説明の際によく語られる「親族承継」「役員・従業員承継」「M&A」は、あくまで事業承継の流れの中における一つの行為です。
そのため「息子に株式をすべて譲渡したから事業承継完了」とはならないのです。
上の図のとおり、事業および会社の状況を把握するところから始まり、アフターケアまでしっかりと行ってはじめて事業承継が完了します。
それでは、それぞれの工程について詳しくみていきましょう。
会社や事業状況の把握
事業承継では、あなたがこれまで経営してきた会社を他者に譲り渡すこととなります。
つまり会社の経営権が他者に移るのです。
しかし、経営権を譲った後も会社がこれまで以上に発展していくようにするためには、内部の状況が杜撰なものを譲るわけにはいきません。
そのため事業承継の起点として、現在の事業および会社の状況を正確に把握することが求められます。
具体的に確認していく項目は多岐にわたりますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 事業や会社の把握ポイント
- 株式の数および所有者
- 決算手続きの点検
- 経営者の個人保証の有無
- 商品・サービスの売上動向
- 無形資産の確認
- リスクの有無
この工程では事業および会社を丸裸にする気持ちが必要となります。
そのため、あなたが別の会社を譲り受ける気持ちになって確認していくのがおすすめです。
あなたが買い手になる場合、例えば債務超過状態の会社や大きな紛争リスクを抱える会社などは買いたい、譲り受けたいとは思いませんよね。
このようにあなたの事業および会社を他者に受け継がせるときであるからこそ、あなたが買い手の気持ちとなることが重要なのです。
問題点の抽出と対策
事業および会社の状況を把握した後は、そこで見つかった問題点を抽出していきます。
そして、可能ならばすぐにでも対策をとっていきましょう。
この工程は事業および会社を最終的にいくらで譲り渡すかに直結します。
あなたの代で解決できる問題は解決しておくことで会社の価値そのものを上げることも可能になります。
事業承継の際に問題になりやすいものは以下のとおりです。
- 事業の選択と集中
- 人材の獲得状況
- 総資産に対する借入金の割合
- 内部組織体制の明確化
- 紛争リスク
会社が黒字だからといって、それだけで事業承継が上手くいくわけではありません。
なるべく綺麗な状態の会社を譲ることができるように、細かな点まで含めて問題を抽出しておきましょう。
そういった会社は社長が引退すると何もできない会社となってしまいます。
それを避けるためにも、事業承継を考え始めた時点で、社長が担当している業務について社内の管理職に引き継いでおきましょう。
3つの承継方法
上記の図でも述べたとおり、承継の方法自体には大きく分けて以下の3つがあります。
- 親族承継
- 役員・従業員承継
- M&A
これらは「誰に承継させるのか」という点で大きく異なります。
M&Aでは、親族でも社内の役員・従業員でもない外部の個人および法人に会社を譲ることとなります。
これら3つの方法について詳しく知りたい場合は、本記事を最後まで読んだうえで、以下の記事を読んでみてください。
事業承継における3つの方法!会社を譲る相手を決める5のポイント解説
3つの方法は、それだけで事業承継となるものではありませんが、承継を実現するための重要な行為となります。
しかし、まずは事業承継の全体を把握することが重要です。
アフターケア
3つの方法で事業および会社を他者に譲った後でもすぐに事業承継が完了するわけではありません。
会社の従業員および取引相手からすると、あなたとは違う人物が新しい経営者となるのです。
従業員や取引相手の中には「この新しい経営者は信用できるのか?」という疑問が生まれることも多いのです。
それをカバーしていくのは新しい経営者の役割でもあると同時に、あなたの役割でもあります。
具体的には以下のような行動を積極的に行い、従業員および取引相手が抱える不信感を解消していく必要があります。
- 従業員に事業承継について自ら真摯に説明する
- 従業員と新しい経営者がコミュニケーションできる場をセッティングする
- 新しい経営者とあなたで取引先に挨拶回りをする
ここまでしてはじめて事業承継を完了したといえます。
そのため、必要に応じて元経営者が管理職として2年~3年ほど会社に残る場合もあるのです。
昨今は人口減少による労働力不足が顕著であるため、事業承継の際になるべく離職者を出さないことが求められます。
もちろん2代目社長となる息子さんを従業員みんなで支えていくことも重要ですが、そもそも息子さんが会社と従業員を任せるに足る人物でなければなりません。
「信頼できる人物に承継させる」ことは非常に重要です。
事業承継は「会社」そのものを次世代に残す試み
さて、ここまでで事業承継は線で行うものであることがイメージできたでしょうか。
事業承継とは一つの手続きを指す言葉ではなく、複数の手続きで実現するものなのですね。
そして事業承継は必ずしも簡単なものではありません。
それは承継の対象となる事業や会社というものが、様々な要素が組み合わさることで成り立っているためです。ここでは、「会社を次世代に残す」ということはどういうことなのかを確認していきましょう。
事業承継を理解するためのポイントは「無形資産も承継していく」ということです。
会社の代表取締役や株主を書き換えるだけでは終わらない
事業承継を行う際、中核的な手続きとしては以下の2つがよく用いられます。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
ここでは簡単に「株式譲渡=会社ごと他者に承継させるもの」「事業譲渡=会社から切り出した特定の事業を他者に承継させるもの」と理解しておきましょう。
ちなみに、経営者が事業承継後に引退を考えている場合は、株式譲渡が利用されることが多くなります。
さて、それでは株式譲渡ないし事業譲渡を実現させて会社の代表取締役や株主を書き換えれば、それで「会社」を次世代に残したことになるでしょうか。
答えはNOです。
これは従業員の気持ちになって考えてみると理解しやすいでしょう。
下の会話文は新しい経営者に変わったことを告げられた時の従業員の気持ちを表しています。
前提として、M&Aの場合は、株式譲渡契約や事業譲渡契約が実行されるまで、従業員にはM&Aのことが知らされない。
これはM&Aは急に破談となることも多く、不確定な情報で従業員をいたずらに不安にさせないため。
つまりM&Aの際、契約がすべて実行された後に、従業員は以下のような立場に置かれることとなる。
そのため本日から当社の経営はA社のX社長に任せることとなります。
私は引退します。
A社ってどんな会社?X社長ってどんな人??
私たちの給料って変わるの?夏季休暇は?退職金は?
私は皆様により良い環境を与えつつ、会社をより大きくすることを考えております。
つきましては…
私たちって通勤する場所も変わるの?突然すぎる!!あまりにひどい!!
経営者が株式譲渡ないし事業譲渡を終えただけで会社を次世代に残したことになると考えていた場合、従業員は最終的に会社から離れていってしまいます。
そうなると、あなたがこれまで営んできた会社は実質的になくなることになるのです。
特に中小企業では、従業員は経営者の人格的な部分に惹かれて今までついてきたという場合があります。
そのため会社からあなたが抜けることで、従業員の気持ちも会社から離れるリスクがあるのです。
ここをクリアして従業員が新しい環境で安心して働くことのできる環境を実現させてこそ会社を次世代に残したことになります。
事業承継では無形資産もしっかりと引き継ぐ
このように事業承継では、従業員の心が会社から離れないようにすることが重要です。
そして、従業員のみならず会社のブランドや顧客との関係といった形のない資産、つまり無形資産もしっかりと次世代に受け継がせなければなりません。
無形資産の承継は、事業承継が難しいと考えられている大きな要因です。
つまり無形資産を理解することは、事業承継における重要な一部を理解することなのです。
無形資産とは
はじめに、そもそも無形資産とは何かについてみていきましょう。
そのためには有形資産とあわせて知ることが重要です。それぞれについては以下の表で確認しましょう。
種類 | 代表例 |
---|---|
有形資産 |
|
無形資産 |
|
有形資産は非常にイメージしやすいですね。
それこそ有形資産のほとんどは価値が算定されたうえで貸借対照表に記載されているはずです。
一方で無形資産は非常に幅広くなります。
しかしとくに中小企業の場合は貸借対照表に無形資産が載ることはほとんどありませんが、無形資産こそ会社を構成する重要な要素です。
たとえば新しい経営者に代わり新しい経営方針に反発した多くの従業員が会社を辞めたとしましょう。
すると従業員が持っていた技術やノウハウは会社から失なわれ取引先や顧客のニーズは満たせなくなります。
そうなると取引先は会社から離れていくでしょう。
これは無形資産の技術やノウハウ、顧客や取引先をしっかりと承継できなかったということです。
そしてあたりまえですが会社の売上は落ち込むことになります。
こういったことを避けるために、事業承継の際は会社の持つ無形資産までしっかりと意識する必要があるのです。
無形資産を承継させるコツ
では、無形資産はどのようにすると承継させることができるのでしょうか。
そもそも無形資産の多くは、あなたの会社にかかわる「人」によって形成されています。
技術やノウハウを持つ従業員がいて、商品・サービスを継続的に購入してくれる顧客がいて、継続的な関係を築くことのできた取引先がいてはじめて無形資産は形成されるのです。
そのため無形資産の承継に際しては、それらの「人」からの信用を失わないことが重要です。具体的には以下の2つのポイントに注意していきましょう。
- 無形資産を承継させるポイント
- 事業承継の背景、新しい環境、あなたの想いを具体的かつ継続的に「人」に伝える
- 会社を承継した後も、できる限りのフォローを「人」の近くで行う
結局のところ、経営者が変わることについて従業員・顧客・取引先に一定の動揺が生まれることは避けようがありません。
そのため、後はその動揺を軽減するためにいかに真摯に粘り強くフォローできるかが重要です。
会社がより発展できるような承継を実現させよう
ここまでみてきたとおり、「会社」を次世代に残すことは決して簡単ではありません。
しかし同時に、そのためにあなたにできることは非常に多くなっています。
それこそ信頼できる承継相手を見つけることは従業員のためになりますし、既存のサービス体制が変わらないようにフォローすることは顧客のためになるのです。
そして無形資産を残すためには、会社にかかわるすべての人に真摯に尽くすことが大切です。
そうすることで、会社をより発展させるような事業承継を実現することも夢ではないのです。
これまで会社を守るために人生を懸けてきたあなただからこそ、事業承継を最後の仕事と思って全力で臨んでください。
そうすれば従業員・顧客・取引先は一抹の寂しさを感じながらも、あなたの選択を歓迎してくれるでしょう。
起業から今に至るまで、多くの人に支えられてきたからなぁ。
そして、会社経営から引退したとしても、会社にかかわりのある人との個人的な付き合いまで切れてしまうわけではありません。
会社をさらに発展させるための土台となるような事業承継をあなたの最後の仕事とし、多くの人の拍手の中で第二の人生をスタートさせましょう。
事業承継ができなかった場合は会社を清算
ここまでで事業承継について様々な角度から解説してきました。
「点ではなく線で行う事業承継」の姿がイメージできてきたのではないでしょうか。
ここでは、事業承継ができなかった場合における会社の清算について簡単に解説します。
事業承継はどんな会社でも必ずできるものではありません。
そのため経営者の高齢化に伴い、会社をたたむ選択肢を取る経営者も増えています。
事業承継へのモチベーションを高めるためにも、会社の清算について知ることはとても重要です。
会社清算の要点会社の清算=会社の換金
換金後に債務を支払い、残余財産は株主で分配
清算完了すると会社は消滅する
清算の種類
・通常清算:清算人を選定して行う
・特別清算:裁判所が監督して行う
司法書士に任せると清算手続き全体で20万円程度必要
「特別清算」とは債務超過で会社に残っている資産だけで債務の返済が取れない場合に取られる清算方法です。
会社にある資産のみ債務の支払いができる場合に取られる清算方法である「通常清算」の流れを簡単に説明します。
- 株主総会での解散決議
- 清算人の専任(→経営者か弁護士がなることが一般的)
- 法務局で清算人の氏名等を登記
- 債権者向けに官報公告を出す
- 貸借対照表と財産目録の作成と株主総会の承認
- 不動産など資産の売却や売掛金など債権の回収
- 債務の弁済(→債務を支払いと判明した場合は特別清算か破産の申し立て)
- 残余財産がある場合は株主に分配
- 清算人が作成した決算報告を株主総会で承認
- 法務局で清算結了登記
会社清算の手続きは簡単なものではありませんし、会社清算は前向きで面白みのある仕事ではないため、ある意味では会社売却や事業承継よりパワーが必要になるかもしれません。
会社清算には「経営をやめることができること」「清算後の財産を受け取れること」のメリットがありますが、デメリットのほうが大きいと考えています。
- 従業員と顧客の場所が失われる
- 経営者が受けとることのできる対価が減る可能性が高い
この2点のデメリットについて詳しくみていきましょう。
従業員や顧客に悪影響が出る
会社は従業員にとっては働く場所であり、顧客にとっては商品・サービスの提供を受ける場所です。
そのため会社を清算するということは、それらの場所を消滅させることとなります。
従業員は次の就職先を見つけなければなりませんし、顧客は代わりとなる商品・サービスを見つけなければなりません。
もちろん会社の清算手続きがそもそも存在している以上は、従業員も顧客も会社が消える場合があることは承知済みであると考えることもできます。
しかし、ここまで会社を守ってきた経営者としては、やはり従業員や顧客の場所を奪うことに抵抗があって当然です。
そのため多くの経営者が清算ではなく事業承継を目指すのです。
経営者が受けとることのできる対価が減る可能性が高い
中小企業の場合、経営者が株式の多くを保有しているため、清算後に残余財産があればそのほとんどを経営者であるあなたが受けとることもできるでしょう。
しかし清算後に残る残余財産は、事業承継における株式譲渡や事業譲渡の対価と比較して少なくなる傾向があります。
これは事業承継においてあなたが受けとることになる対価には、会社運営が継続することで生まれる将来利益の分も含まれているためです。
つまり身も蓋もない話ですが、事業承継を実現した方があなたの手元に残るお金は多くなるのです。
清算はいわばいつでもできるものなので、事業承継にチャレンジして、それが上手くいかなかったときに選択肢の一つとして検討したら良いのはないでしょうか。
事業承継を成功させる5つのポイント
記事もようやく終わりに近づいてきました。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
ここまで読み進めてきたあなたの頭の中には事業承継の姿が見えてきていると思います。
最後に事業承継を成功させる5つのポイントをチェックして、事業承継の全体像を把握する記事を締めくくりましょう。
- 事業承継を成功させる5つのポイント
- 早い段階から着手する
- 承継方法は、会社の状況から導き出す
- 初期の段階では従業員に事業承継について伝えるべきではない
- 承継後もあなたは2~3年は会社に残る覚悟を持つ
- M&Aを行う際は、相手探しをじっくりと
早い段階から着手する
事業承継は会社の現状把握から誰に引き継いでもらうか、承継後のアフターフォローまで考えることややるべきことが多くあります。
そのため事業承継は少しでも早く着手するのが成功のポイントです。
経営者が体調を崩し、半年後には引退しなければならないような状況になってからでは満足のいく事業承継は難しくなります。
まず事業承継に着手しようと思ったときは、以下のような簡単なことから始めるのがおすすめです。
- 後継者として手を上げてくれそうな役員や社員に話を持ち掛ける
- M&Aマッチングサイトでどのような事例があるのか知る
- M&Aアドバイザーや仲介会社に相談してみる
- 顧問税理士や会計士、取引銀行に相談してみる
事業承継は経営者が1人で抱えてしまうことが多い経営課題ですので、専門家やマッチングサイトを利用して他者を巻き込むことで先に進みやすくなります。
むしろそういった状態のほうが承継後の会社のフォローも手厚く行うことができ、売却額も多くなり、結果として従業員から顧客まですべての人が満足できる可能性が高いのです。
承継方法は会社の状況から導き出す
この記事では以下の3つの承継方法があると述べました。
- 親族承継
- 役員・従業員承継
- M&A
このうちのどれを選択するかは、あなたの希望ではなく会社の状況から客観的に判断していきましょう。
どんなに息子に会社を継いでほしいと考えていても、息子が他の職業に就いて生きていきたいと考えているならば、無理に承継させても全員が不幸になるだけです。
M&Aでこれまで関係がなかった第三者に会社を任せることに抵抗を持つ経営者は少なくありませんが、優れた人物ならばあなたの想いを引き継いで会社をより発展させていってくれるはずです。
初期の段階では従業員に事業承継について伝えるべきではない
こちらについては記事の中盤でも触れましたが、承継先が確定するまでは従業員に情報を公開すべきではありません。
それこそM&Aを考えている場合は、終盤まで従業員への周知を行わないのが一般的です。
ただし親族や役員および従業員へ会社を承継する際は、比較的早い段階で周知をして、皆で一丸となって新しい経営者を支えていくのも一つの手段ではあります。
しかし場合によっては、従業員の中で次を任せる人物について意見が分かれることもあります。
未来の会社を任せる人物を決めることは、これまで会社を守ってきたあなたの権利であり義務でもあります。
そのため従業員に情報を与えることで、余計な混乱を生まないように配慮すべきなのです。
結果として従業員全体に混乱が広がり業務に影響がでることもあります。
経営者として従業員になるべく早く伝えたい気持ちはわかるのですが、何も決まっていない状態で伝えても混乱を生むだけです。
そうではなく、あなたの目で次を任せるに足る人物まで選び、結果を理由とともに従業員に伝え、その後のフォローに全力を尽くすことで従業員に報いれば良いのです。
承継後もあなたは2~3年は会社に残る覚悟を持つ
会社の経営をバトンタッチした後も、あなたが会社をフォローすることで事業承継が上手くいく可能性は高まります。
フォローの方法は承継のあり方や従業員の同様の度合いによって異なりますが、必要な場合はあなたも管理職として新しい会社に2年から3年は残る覚悟を持つと良いでしょう。
M&A後の2年~3年間は、従来の部長と新しい社長が直接やりとりをする組織のかたちを作らずに、元社長が間に入るのです。
そのための役職を新設することも積極的に行って良いでしょう。
従業員の管理は従来どおりに部長に任せ、部長と新しい社長をつなぐ役目を元社長が行うイメージです。
このようにして臨機応変にフォローしていくと、事業承継は成功します。
そして、後を任せることができると判断した元社長であるあなたが組織から抜けて、事業承継が完了となります。
M&Aを行う際は、相手探しをじっくりと
最近はM&Aを利用して事業承継を行うことが増えています。
しかし第三者への事業承継は親族承継や役員・従業員承継の場合と比べて従業員の不安は大きくなります。
そのためM&Aを行う際は買い手が信頼できる会社であるか慎重にチェックする必要があるのです。
M&Aの際はついつい譲渡価格のみに注目してしまいますが、会社を健全なかたちで次世代に残す事業承継のためには、従業員や顧客に真摯に対応してくれる買い手を探すことが求められます。
また買い手探しをじっくりと行うためには、やはり早い段階で事業承継に着手する必要があるでしょう。
まとめ
ここまでお疲れ様でした。
長い記事でしたが、最後まで読んでくださりありがとうございます。
これであなたの頭の中には事業承継の全体像が見えてきたはずです。
- 今回の記事のポイント
- 事業承継は点ではなく線で行う
- 親族承継、役員・従業員承継、M&Aという3つの方法
- 事業承継では従業員のケアを真摯に継続的に行う
- 会社のブランドなどの無形資産までしっかりと承継することが重要
- 事業承継ができなかったときは会社の清算
- 事業承継には早い段階から着手していこう
事業承継は大変な仕事ですが、経営者として今に至るまで会社を守ってきたあなたが、会社のためにできる最後のことでもあります。
愛着のある会社が末永く繁栄していくことができるよう早めに着手をして、親族承継からM&Aまで幅広い選択肢をもって臨んでみてください。
あなたが会社とそこにかかわる人と真摯に向き合うことができれば、事業承継はきっと成功します。
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編集部
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