「事業承継を考えているけれど、子に継がせようか、それとも思い切ってM&Aをしたら良いのだろうか?」
「もっとも会社のためになる事業承継は難しいなぁ、誰に継がせるべきか決めるポイントが知りたい」
事業承継は点ではなく線で行われますが、実際に誰に会社を譲るかは非常に重要なポイントとなります。
あなたも息子や従業員に譲ろうか、それとも思い切ってM&Aの方向で動いてみようか悩んでいるのではないでしょうか。
適切な事業承継は、会社のみならず従業員一人ひとりの未来も明るくします。
そこで、今回の記事では、
- 3つの承継方法それぞれのメリット・デメリット
- 事業承継全体の流れの確認
- 具体的な承継方法を決める5つのポイント
を解説していきます。
承継方法に唯一無二の正解はなく、あなたの会社の状態に沿った形で選択する必要があります。
今いちど頭の中をフラットな状態にして、親族承継、役員・従業員承継、M&Aの3つの承継方法を比べてみましょう。
そうすることで、あなたの会社にもっとも適した承継方法を見つけることができます。
承継方法には3つの選択肢がある
はじめに事業承継の核となる3つの承継方法についてみていきましょう。
ここで3つを大まかに比較し、この先で1つずつ詳しく解説していきます。
それでは、さっそく以下の表を確認してください。
承継方法 | 特徴 |
親族承継 | ・代表的なのは息子や娘に会社を譲るもの ・子以外の親族に譲る場合もある ・後継者に対する従業員の評価が二分する傾向がある ・親族間の争いにつながる恐れがある |
役員・ 従業員承継 |
・すでに会社の内部にいる人材に譲るもの ・すでに業務を熟知した人間に譲ることができる ・会社を譲り受ける人物が株式取得をする資金を持たない恐れ |
M&A | ・幅広い選択肢の中から後継者を見つけられる ・経営者が創業者利益を得やすい ・希望する相手を見つけるのに時間がかかる恐れがある |
ここでは3つの承継方法の特徴を簡単にまとめました。
それぞれの詳しいメリット・デメリット、注意点については後述します。
漠然とでも3つの違いがイメージできたでしょうか?
3つの承継方法について唯一無二の正解はありません。
この中からあなたの会社に合ったものを選ぶことが重要なのです。
次に2012年のものと少し古いですが、中小企業が選択している承継方法の割合について確認しましょう。
データでみる中小企業の事業承継の実態
ここでは統計から中小企業がどのようにして事業承継を実現しているかを紹介していきます。
まずは2012年のものと少し古いですが、中小企業が選択している承継方法の割合について確認しましょう。
引用元:中小企業庁「承継形態別の現状と課題」
小規模事業者および中規模企業のどちらにおいても、親族内承継がもっとも多くなっています。
また役員や従業員を後継者とする内部昇格も決して少なくはありません。
これに対して、社外の人物を後継者とする「外部招へい」「出向」「買収」はもっとも少なくなっています。
特にM&Aを意味する「買収」はいずれも1~2%です。
2012年の時点では、中小企業のほとんどがM&Aが実現できていなかったのです。
続いて、中規模企業が親族または親族以外を後継者とする理由についてみていきましょう。
このデータにおいて興味深い点は、赤いマーカーで囲んだ理由です。
親族以外を後継者として方が、以下の3つの点においてメリットがあります。
- 役員・従業員の士気向上
- 役員・従業員からの理解
- 株主からの理解
古くさい例えにはなりますが、「会社は絶対に息子に継がせるのだ!」という経営者の判断は、その実体がどうであれ身内びいきだと捉えられてしまう恐れがあるのでしょう。
ただし一方で、以下のような実務的な手続きについては親族承継にメリットがあるようです。
- 借入金の個人保証の引継ぎ
- 金融機関との関係維持
- 自社株の引継ぎ
経営者あちらを立てればこちらが立たずではないけれど、
すべての条件を備えた理想的な事業承継は難しいんだなぁ。
編集部そうであるからこそ3つの承継方法について詳しく理解し、
あなたの会社にもっとも適したものを選ぶ必要がありますね。つづいては、3つの承継方法についてそれぞれ詳しく解説していきます。
親族への事業承継
はじめに親族承継について解説します。
親族承継とは、その名のとおり子をはじめとした親族に会社を譲るものです。
子や親族があらかじめ会社内部に従業員としていることもあるため、役員・従業員承継と重複する場合も多いです。
そして、先ほど触れたとおり未だに多くの中小企業が親族承継を行っています。
それでは親族承継のメリット・デメリット、注意点について確認していきましょう。
親族承継のメリット
親族承継のメリットをまとめると以下のとおりとなります。
親族承継のメリット
- 後継者に人望があると、従業員の動揺が少ない
- 後継者を早い段階で決めて、育成期間を長くとることができる
- 相続の制度を使えば株式を承継させやすい
- 所有と経営の分離を防ぐことができる
結局のところ、後継者となる親族に経営者としての資質と人望があるか否かが非常に重要となります。
それがあると、役員および従業員も納得し、会社で一丸となって新しい経営者を盛り上げていくことができます。
親族承継のデメリット
次に親族承継のデメリットをみていきましょう。
親族承継のデメリット
- 親族内に経営者として相応しい人物がいるとは限らない
- 従業員が社長の身内びいきと感じる恐れがある
- 子が複数いる場合、親族間で争いになる恐れがある
- 相続で株式が分散すると、流動的な経営が難しくなる
親族承継の場合、後継者を広く探すことが難しくなります。
そのため親族内に経営者に相応しい人物がいないにもかかわらず親族承継を強行した場合は、会社と従業員にとって大きなリスクとなります。
その結果、従業員がどんどん会社から離れていくと、それこそ事業を継続することは難しくなることすらあるのです。
また株式を親族内の誰に集中させるか、代表権を誰に譲るかで、親族内で争いが起こるリスクもあります。
編集部私どもとしては、成功と失敗が極端になる印象があります。
それこそ人望のある二代目社長を選ぶことができれば、
従業員全員で支えて会社を持ち上げていくこともできます。
一方で、それができなかった場合は従業員の反発が非常に大きくなります。
親族承継のつまずきポイント
ここまで解説してきたとおり、親族承継にはメリットとデメリットがあります。
そしてデメリットと共通する部分もありますが、親族承継をつまずかせることにつながるのは以下のポイントです。
- 後継者が経営のノウハウを身につけるには長い時間が必要となる
- 古参社員への配慮が足りない
たとえば、あなたの子を後継者とする場合、まずは会社の中で何かしらのポジションにつかせて経営者としてのノウハウを伝えていくことになります。
しかし、経営者の感覚を理解するためには長い年月が必要となります。
それほど経営者と一介の従業員の感覚には違いがあるのですね。
そのため後継者を育てる段階で、会社の成長がストップする恐れも十分にあります。
また、あなたがいきなり子を専務などのポジションにつけると、古参従業員から大きな反発が起こる恐れがあります。
彼らの立場からすると以下のように思ってしまうのも無理はないでしょう。
従業員A俺は30年も会社に尽くしてきてようやく部長なのに、
社長の息子はいきなり専務かよ
従業員Bえ、社長の息子がいきなり私たちに指示を出す管理職なの?
今までまともに働いたこともないのに?
従業員C社長の息子はぜんぜん仕事がわかってないじゃないか!
それで混乱するのは現場なんだぞ!!
このように親族承継には独特の難しさと人の感情のもつれがあります。
経営者の浅はかな判断が会社の崩壊につながる恐れもあるため、誰を後継者とするかは慎重に選ぶ必要があるのです。
株式の取扱い
さいごに親族承継の株式の取扱いについて簡単に確認しましょう。
多くの中小企業では、経営者が株式の大半を所有しています。
つまり会社の所有と経営が分離していないことが多いのですね。
そうであるからこそ迅速な意思決定ができ、それが中小企業の一つの武器となっている側面もあります。
こういった環境を事業承継後も維持するためには、最終的に後継者に株式の大半を集中させる必要があるのです。
株式を集中させる方法と問題点を図にまとめたので、以下を確認してみてください。
このように株式を後継者に集中させる際は、2つの問題点が発生する恐れがあります。
問題点②については、上記の図の長女や次男も同じ会社に属している場合は、会社内での揉め事にもつながるリスクがあります。
役員・従業員への事業承継
親族承継について確認したところで、次は役員・従業員承継について解説していきます。
先ほども軽く触れましたが社長の息子があらかじめ役員や従業員として会社に所属している場合もあります。
しかし、ここにおける「役員・従業員」に親族は含みません。
あくまで親族外の役員・従業員に会社を譲る前提で読んでみてください。
役員・従業員承継のメリット
役員・従業員承継のメリットは以下のとおりです。
役員・従業員承継のメリット
- 親族承継よりは広く後継者を探すことができる
- 後継者が会社の業務について詳しく理解している
- 承継時点で、取引先とすでに良好な関係を作ることができている場合がある
- 従来の会社組織および体制を維持しやすい
役員・従業員承継では、長く会社に尽力してくれた人物に会社を譲ることができます。
そのため会社の組織と体制をそのまま維持できる可能性が高くなるのです。
特に従業員からの人望を集めている役員や管理職を後継者にすることができると、従業員の反発も小さくなります。
役員・従業員承継のデメリット
このような役員・従業員承継ですが、以下のデメリットもあります。
役員・従業員承継のデメリット
- 役員、適性のある従業員ともに高齢の場合がある
- 従業員の感覚から経営者の感覚への転換が難しい
- 後継者に株式を買いとる資金力がない恐れがある
- 金融機関からの借入金の個人保証の引継ぎが難しい
- 会社に新しい風を吹かせにくい
親族承継のところでも触れましたが、経営者の感覚を身につけることは一朝一夕でできるものではありません。
特に長いこと従業員として働いていた人物は経営者の感覚を得るのに苦労するでしょう。
個人保証とは、経営者が金融機関からの借入金について連帯保証をしているものです。
あなたが会社の経営から引退する際は最終的に自らの個人保証も解除したいと考えるのが当然です。
しかし金融機関としては貸付金の回収リスクが上昇するため、すぐにあなたの個人保証解除に応じてくれないこともあります。
また長く働いていた役員や従業員を後継者とすると、会社の組織や体制を新しいものに変えにくくなる恐れもあります。
事業承継のタイミングは、会社を大きく変える瞬間でもあるのです。
役員・従業員承継のつまずきポイント
つづいて役員・従業員承継をつまずかせるポイントについて解説します。
一見すると堅実に思える承継方法ですが、以下のポイントには十分に注意する必要があります。
- 会社の中に派閥やグループがある場合、事業承継で会社内部が二分される
- 後継者が他の従業員への配慮を優先させ、迅速かつ厳しい経営ができなくなる
会社の内部には、管理職を巻き込んで派閥が形成されている場合があります。
そういったものがあると、一人の管理職を後継者として選んだときに会社の内部の人間が二つに分かれてしまう恐れがあるのです。
これではビジネスが円滑に進まなくなります。
また、いざ従業員が新しい経営者となった後は、従業員時代の感覚が染みついているために、経営者としての厳しい判断ができない場合があります。
特にこれまで同じ立場で働いてきた従業員に対する厳しい判断は難しくなるでしょう。
経営者なるほど。
たしかに従業員から急に経営者になる際は様々なハードルがあるだろう。
私たちは、ときに従業員に対して厳しい指示をしなければならないからね。
編集部経営者と従業員の間にある大きな溝は簡単に越えられるものではありません。
これまで従業員として仲間と働いてきた人物が会社を代表する経営者になる際は、
強いプレッシャーを感じるでしょう。
経営者と従業員では、会社に対する責任の重さも大きく違います。
株式の取扱い
それでは役員・従業員承継の場合、会社の株式はどうなるのでしょうか。
株式を後継者に譲る方法と、そこで発生する問題点を図で確認しましょう。
これまで一介の役員もしくは従業員として働いてきた人物は、中小企業のものであっても会社の株式を買いとる資金を用意できない場合が多いのです。
それこそ一見すると小さな会社であっても、株式の価値が数千万円から数億円となることは珍しくありません。
それをいきなり買えと言われても無理な話です。
その場合、現在の社長が株式を保有したまま経営権だけを役員・従業員に譲ることがあります。
しかし、役員の選解任や資本金の増加など株主総会で決めなければならない事項について双方の間で意見が食い違い、会社の方向性が定まらなくなるのです。
M&Aによる事業承継
ここまで親族承継、役員・従業員承継と2つの承継方法についてみていきました。
ここでは3つ目の承継方法であるM&Aについて解説していきます。
M&Aというと抵抗を持つ人も多いですが、メリットとデメリットを正確に理解して事業承継における一つの選択肢として頭の中に入れておきましょう
M&Aのメリット
M&Aのメリットは以下のとおりです。
M&Aのメリット
- もっとも広く後継者を探すことができる
- 同種の事業について経験の豊富な経営者に会社を任せることができる
- シナジーが生まれる可能性、業務を急激に拡大できる可能性がある
- 現在の経営者が会社を譲渡することによる利益を得られる
- 会社に新しい風を吹かせやすい
M&Aでは親族や会社に縛られずに後継者を探すことができるため、適任となる人物を見つけやすくなります。
それこそあなたの会社と同種の事業を営む会社が買い手となるのであれば、あなたの会社と従業員の今後も任せやすいでしょう。
シナジーとは「相乗効果」を意味しますが、M&Aではこれも起こりやすくなります。
2つの会社の生産拠点を統合してコストを下げたり、互いの会社の販路をあわせて使って売上を高めたりすることができるのです。
M&Aのデメリット
このように広い選択肢の中から後継者と今後の会社のあり方を見つけることのできるM&Aですが、
以下のようなデメリットもあります。
M&Aのデメリット
- 事業承継を完了させるまでに時間がかかる
- 従業員が動揺を感じやすい
- 会社の現在の組織や体制を維持できない恐れがある
もっとも大きなデメリットとなるのは従業員の動揺です。
M&Aでは、売り手と買い手が株式譲渡契約を締結する最終盤まで従業員に対して情報が隠されることが多いです。
これは不確定の段階で情報を提供して従業員がいたずらに動揺することを避ける意味を持ちますが、その分やはりM&Aについて知ったときの動揺は大きくなります。
もちろん場合によっては、M&Aを理由に離職する従業員も現れます。
編集部その点についての心配はほとんどの場合、必要ありません。
なぜならばM&Aには、優秀な人材を買う側面があるためです。
つまり従業員の離職は買い手にとっても全力で阻止したいものなのです。
そのため不当は扱いをするなどもってのほかであり、
しっかりと従業員のケアに努めます。
M&Aのつまずきポイント
それではM&Aではどのようなポイントでつまずくことが多いのでしょうか。
以下の2つはM&Aにおいて、しばしば問題となるものです。
- そもそも買い手が見つからない
- 従業員が「社長に見放された」という意識を持ってしまう
M&Aを実現する場合、当然ながら買い手が存在しなければなりません。
もちろん、あなたの会社が安定して利益を生むことのできるものならば買い手も見つかりやすくなりますが、債務超過などの場合は買い手を見つけること自体が難しくなります。
またケアを疎かにすると、従業員が「社長は私たちをお金で売ったんだ」と感じる場合もあり、離職数が増える恐れがあります。
編集部従業員のケアはあなたと買い手で共同して行う必要があります。
具体的には、M&Aの経緯についての説明会を開催し、
従業員が買い手をコミュニケーションをとる場をセッティングしていきます。
また場合によっては、あなたが管理職になって会社に2年~3年ほど残ることも考えられます。
株式の取扱い
M&Aにおける株式の取扱いは非常にシンプルです。
一般的には、株式譲渡契約を締結することで買い手があなたの株式を買いとる方法がとられます。
あなたの保有する株式の価値が数千万円から数億円であっても、大きな会社であればそれを買いとる資金を用意することができます。
このようにM&Aの際は株式の取扱いについて大きな問題が起こることはほとんどありません。
むしろ、株式価値の評価の段階で交渉や議論の必要となる場面が多くなります。
株式の価値(企業の価値)算定を含む株式譲渡について詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてください。
株式譲渡の特徴と手続きの流れ、法務・会計・税務契約等の注意点〜企業価値の計算例アリ!
事業承継全体の流れを確認
ここまで親族承継、役員・従業員承継、M&Aという3つの承継方法について解説してきました。
あなたの会社にもっとも合う方法についてイメージが湧いてきたでしょうか?
しかし事業承継は3つの承継方法のどれかを選ぶだけで実現できるものではありません。
それは事業承継が点ではなく線で行われるためです。
そこで、ここでは事業承継の全体の流れをあらためて確認していきましょう。
まずは以下の図を見てください。
このように事業承継は、事業および会社の状態を把握することから始まり、アフターケアをもって完了します。
以下では、それぞれの工程について簡単に解説していきます。
事業および会社の状況の把握
事業承継のスタートは、現在の事業および会社の状況を整理することから始まります。
これはどの承継方法を選択する場合であっても変わりません。
承継の際、会社には大なり小なり何かしらの混乱と動揺が生まれます。
それがビジネスにネガティブな影響を与えないようにするためにも、あらかじめ事業と会社の状態を整理しておく必要があるのです。
ここで適切な把握がなされると、後継者への引継ぎも容易になります。
社長であるあなたの頭には当然に入っていることであっても、あらためて確認しておきましょう。
問題点の抽出と対策
事業および会社の状況を把握するなかで、長いあいだ目を背けていたような問題点が見つかってくるでしょう。
これらについては、あなたが社長であるうちに対策をとっておくことが求められます。
問題点の典型例としては以下のものが挙げられます。
- 事業の選択と集中
- 人材の獲得状況
- 総資産に対する借入金の割合
- 内部組織体制の明確化
- 紛争リスク
こういったものはM&Aの際、買い手にリスクと捉えられる恐れがあります。
そうすると、それだけあなたの保有する株式の価値が下がってしまうのです。
あなたが経営権を有しているうちに解決を図りましょう。
経営者私の会社をM&Aで譲渡する場合、
誰が会社の内部について調べるの?
編集部原則としては外部の会計士が調査します。
これは仲介会社やM&Aアドバイザーを利用する場合であっても、
マッチングサイトを利用する場合であっても変わりません。
この調査を「デューデリジェンス」と呼びます。
3つの承継方法
3つの承継方法については、ここまでで詳しく解説してきました。
具体的な承継方法を決めるためにも、「事業および会社の状況の把握」「問題点の抽出と対策」の工程は重要です。
こうした全体の流れの中で、あなたの会社と従業員にもっとも適した承継方法を選んでいってください。
アフターケア
どのような承継方法を選択するにしても、あなたが行うアフターケアは重要です。
それこそ親族や役員・従業員に会社を譲った場合であっても、最初の数年間はともに代表権を有するかたちにする必要もあります。
そして後継者に対する取引先、金融機関、顧客などの信頼を構築していき、徐々に代表権をあなたから後継者に移していくのです。
M&Aの際は、あなたのもとに代表権が残されることはそれほど多くありません。
ただし、先ほども触れたようにあなたが会社の管理職として2年~3年ほど残ることで、従業員のケアをすることがあります。
このように線としての事業承継は完了までに一定の期間がかかります。
つまりなるべく早くから着手しておく必要があるのです。それが事業承継を成功させるコツです。
具体的な承継方法を決める5つのポイント
さて、記事も終盤にさしかかってきました。
ここまで長かったと思いますが、記事全体をまとめる意味で、さいごに承継方法を決める5つのポイントを紹介します。
5つのポイントとは以下のとおりです。
- はじめから一つにしぼらず、並行して検討する
- 従業員からの信頼があるか否か
- 従業員としての質と経営者としての質は別物
- M&Aの際はシナジーに着目
- あなたも2年~3年間は会社に残る前提で承継方法を決める
これらについて確認することで、あなたの会社に適した承継方法を実際に検討するスタートをきることができます。
はじめから一つにしぼらず、並行して検討する
はじめのうちは承継方法をなるべくしぼらないことが重要です。
それこそ「会社は絶対に息子に継がせるのだ!」という強い意志は、結果として息子本人や従業員にネガティブな影響を与える恐れがあります。
事業承継を成功させるためには、あなたの意思よりも客観的な視点が必要となるのです。
そのため最初から承継方法を限定せず、臨機応変に検討を進めていきましょう。
具体的には以下の2つを並行して行っていくことになります。
- 親族、役員・従業員に会社を継ぐ意思があるか確認
- M&Aマッチングサイトなどに登録して、売り案件としての会社の価値を知る
特にM&Aにおける相手探しには時間がかかります。
また買い手候補者から交渉を持ちかけられたからといって、必ず会社を譲らなければならないということもありません。
そのためとりあえずマッチングサイトに登録して、あなたの会社を幅広い買い手候補者の目に触れされるのはおすすめです。
編集部ただし事業承継について従業員に伝えるタイミングには慎重になってください。
あまりに早い段階で伝えると、会社の中に余計な混乱が生まれ、
それがビジネスに支障をきたす恐れがあります。
伝えるタイミングは「承継させることが確実となった時点」にするのが無難です。
つまりそれまでは資料管理などを徹底して、
秘密の漏洩を防ぐ必要があります。
従業員からの信頼があるか否か
承継方法を決めるということは承継させる人物を決めるということです。
その際に経営の資質とあわせてもっとも重要になるのが、その相手が従業員から信頼されているか否かです。
特に親族、役員・従業員に承継させることを考えている場合に重要となります。
つまり以下の要素のみで機械的に承継させる相手を決めてはいけないのですね。
- あなたのとの血縁関係
- 会社における勤続年数
- 従業員としての仕事能力
結局のところ事業承継時に従業員が離職するリスクを低くするためには、従業員が「ついていきたい!」と思える相手に会社を譲る必要があります。
編集部M&Aの場合、新しい経営者に対する従業員の信頼などなくて当然にも思えますが、
あなたと新しい経営者が共同で説明会や懇親会を開くことで、
従業員の信頼を勝ち得ることができます。
つまりM&Aにおいては、「そう遠くないうちに従業員から信頼されるだろう」という相手を、
あなたが見抜くことが大切なのです。
従業員としての質と経営者としての質は別物
従業員の中から会社を譲る相手を探す場合、従業員としての能力だけで選んでしまうことがあります。
それこそ営業成績がトップであったり、事務作業がおそろしく早かったりする人物です。
こういった勤勉さは経営者としても必要な要素ですが、それだけでは経営が務まらないのも事実です。
「勤勉に働き、周囲からの信頼も厚い」人物であっても、厳しい判断をする覚悟と勇気を持つことが難しい場合があるのです。
こういった経営者としての資質の観点から相手を決めていくことも重要です。
M&Aの際はシナジーに着目
先ほども説明したとおり、シナジーとは「相乗効果」です。
これは主にM&Aにおける大きなメリットとなります。
たとえば、あなたの会社がM&Aを経て同業の会社の子会社になった場合について考えると、以下のような相乗効果が期待できます。
こうしたシナジーが結果として表れてくると、従業員のモチベーションアップも期待できます。
M&Aについて検討する場合は、買い手との間にシナジーが生まれるか否かまで検討していきましょう。
あなたも2年~3年は会社に残る前提で承継方法を決める
こちらも先ほど触れましたが、承継後にあなたも会社に2年~3年は残る前提で承継方法を決めていきましょう。
これまで会社を守ってきたあなたほど、承継後の後継者や従業員をケアできる立場にある存在はないのです。
そして数年間のケアは3つの承継方法の短所を補います。
つまり最終的に事業承継を成功させる可能性を高くすることができるのです。
編集部あなたが会社に残る際はポジションに注意してください。
それこそ後継者より上の立場になってしまうと、余計に従業員に迷いが生じます。
表面的な経営は後継者に任せ、背後でサポートしていくような立場が良いでしょう。
場合によっては、「アドバイザー」などのポジションを新設することも検討してください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ここまで長い記事でしたが、さいごまで読んでくださりありがとうございます。
事業承継における3つの承継方法について理解することができたでしょうか。
業承継は点ではなく線で行うものですが、具体的な承継方法としてどれを選択するかは非常に重要です。
それぞれの方法の特徴を正確に把握し、あなたの会社に適したものを選んでください。
以下は今回の記事のポイントです。
- 承継方法には、親族承継、役員・従業員承継、M&Aの3つがある
- それぞれ異なるメリットとデメリットを有する
- あなたの感情ではなく、会社と従業員に客観的に適した承継方法を選択しよう
- 事業承継は、会社の状態を把握することから始まり、アフターケアをもって完了
- 後継者は従業員からの信頼と経営の資質で選ぶ
- 承継後はあなたも会社に2年~3年は残り、後継者と従業員をケアする
事業承継は引退を考えるあなたの最後の大仕事です。
ここで適切な承継方法を選ぶことができると、あなたの会社はさらに発展していくことができます。
そして、それは役員、従業員、顧客、取引先といった会社に関係する人たちの喜びとなるはずです。
着手が早ければ早いほど、事業承継が成功する可能性は高くなります。
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