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M&Aコラム

COLUMN

M&Aは食品製造業界を救うのか丨M&Aで気をつけるべきポイントや事例を紹介

編集部人材不足に悩まされている食品製造業界では、M&Aによって従業員の確保や資本の安定を目指そうという動きが活発になってきています

食品製造業オーナーウチの周りでも何件かM&Aを行っている企業があったよ。実際のところどれくらいの効果があるんだろう?

編集部この記事を読んでいただければ、食品製造業界の動向や直面している課題、それらをM&Aによってどのように解決するかが分かりますよ

食品製造業界の動向や直面している課題とは


まずは食品製造業界の動向や直面している課題について、あらためてデータと共に確認していきましょう。

同業界の動向や課題は、大きく以下の3点に集約されます。

  • 深刻な人材不足と非正規雇用への依存
  • 機械化へのハードルの高さ
  • 労働生産性と給与の低さを解消できない


一つずつ解説していきます。

深刻な人材不足と非正規雇用への依存


食品製造業界では、かねてより深刻な人材不足が叫ばれていました。

以下の図表を見ても分かる通り、有効求人倍率は全業界平均よりも高い水準で推移しています。

参考:飲食料品製造業の有効求人倍率の推移│農林水産省

また、食品製造業界の人材不足は今後も改善せずに強まる傾向にあると見られており、日銀短観によって発表されたDI(雇用人員判断)では、下図のように中小企業の製造業全体のスコアよりも深刻な数値を記録しています。

参考:食料品製造業の雇用人員判断(DI)の推移│農林水産省

また、こうした食品製造業界を覆う人材不足の影は、企業努力だけでは拭い去れないと考えられます。

これから説明する「機械化へのハードルの高さ」や「労働生産性と給与の低さを解消できない」という課題が横たわり、食品製造業界全体は長らく人材不足に悩まされているのです。

機械化へのハードルの高さ

ものづくりの国でもある日本を長らく支えてきた製造業にも近代化の波が到達し、近年はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に着手する企業も増加しています。

マーケティングを自動化するMAツールや、カスタマーサポートを自動化するチャットボットと同様に、ものづくりもロボットによって自動化しよう、という流れが生まれており、資金力のある大企業を先駆けに、人力での生産からロボットによる生産へ切り替える動きが強まっているのです。

しかし、中小企業や零細企業の場合は自動化のための設備投資に費用をかけられず、自動化に踏み切れないケースも少なくありません。加えて食品製造業という特性上、緻密な作業が求められる工程も多く、RPAに踏み切るためにはロボットをオーダーメイドしなければならない企業も多く存在するでしょう。

こうした状況も踏まえると、中小企業や零細企業のように資金力に乏しい規模の企業が機械化を行って人材不足を解消するのは難しいと言えます。

労働生産性と給与の低さを解消できない

食品製造業界はかねてより労働生産性の低さが懸念されている領域でした。同業界の特徴として「原料の不統一性」や「つくりすぎによるムダ」「手待ちや運搬のムダ」などが生じやすく、農林水産省の「外食・中食事業者に対する生産性向上支援の取組」の中でも、継続した業務効率の改善が重要であると指摘されています。

こうした産業上の課題に加えて、キャリアアップしにくい業務であるために給与が上がりにくく、労働者のモチベーション維持の難しさも懸念点の一つとして挙げられます。

こまめにマンツーマンのヒアリングを行うなどして、職場内での心理的安全性を確保したり、個人を尊重した仕組み作りに励むことで離職を防ぎ、今いる人材の安定を図ることが重要であると考えられるでしょう。

しかし、それでは止血をし続けている状況に過ぎません。輸血(他社からの人材確保)や造血(採用活動)を行って企業内の人材を拡充することが大切である、という点についても強く意識しなければなりません。

食品製造業界でM&Aが注目されている理由とは

編集部人材不足や機械化のハードルの高さなど、様々な課題を抱えている食品製造業界では、課題の解消につながるM&Aが注目を集めています

食品製造業オーナーなるほど、具体的にはどのような課題の改善が望めるんだろう?

編集部M&Aに取り組むことで、大きく4つの課題解消、改善が望めます。一つずつ解説していくので、詳しく見てみましょう

1.スケールメリットによって生産性が高められる


M&Aのメリットの一つに「スケールメリット」という考え方があります。これは、単純に複数の企業がまとまることで規模が拡大して得られるメリットのことです。

食品製造業は先述したように人力で商品を製造するため、商品の生産力が労働力や工場の規模に依存してしまいます。生産性を高めるにも限度があるので、M&Aによって他社の工場や労働力を獲得できれば、それがそのまま自社の生産力につながるのです。

食品製造業は他の業種に比べてスケールメリットが大きく、M&Aによる恩恵を受け取りやすいと言えるでしょう。

2.設備投資や人材確保の資金を有効に活用できる


M&Aは他社の資本や経営資源を獲得する行為でもあるので、単に設備投資や人材確保に費用をかけるよりも、M&Aによって既存の企業を獲得したほうが、様々な経営資源を整った状態で手に入れられます。

スケールメリットに加えて、こうした「経営資源の獲得」につながるのもM&Aのメリットと言えるでしょう。

3.他社のノウハウや販路を活用できる

M&Aによって獲得できるのは、スケールメリットや経営資源のような目に見える利点だけではありません。他社が保有しているノウハウや販売ルートも合わせて獲得できるため、新規事業の立ち上げや新商品の開発、販売にも着手しやすくなるのです。

このような相乗効果(シナジー効果)が得られるのが、M&Aの最大のメリットと言えるでしょう。

4.伝統ある技術や味を次世代へ承継できる


地域に愛される銘菓や全国にファンを持つ食品製造業を営んでいる場合は、伝統ある技術や味を次世代へ承継できるメリットも考慮しましょう。

食品製造業はものづくり産業と捉えられることも多いですが、その本質は、購入者に「おいしい」という感情を売っているのです。長く愛される食品や、その食品を製造する技術には、それだけの価値があると考えられます。

仮に売り上げが振るっていなかったとしても、デジタルトランスフォーメーションやマーケティングの再考などを通して価値が広く認知されるケースは少なくないので、伝統ある技術や味を次世代へ残すことには大きな意義があるのです。

こうした事業承継目的でのM&Aも多く存在するので、メリットの一つとして捉えておきましょう。

食品製造業界でのM&A事例を紹介

食品製造業オーナーM&Aに取り組むことで様々なメリットが得られるんだね。
自社でも検討してみようと思ったよ

編集部それは何よりです。
検討する際にぜひ参考にしてほしいのが、同業界でのM&A事例です。
自社に置き換えながら検討することで、より具体的なイメージが持てるのではないでしょうか

食品製造業オーナーありがとう、ぜひ事例も確認したいね

編集部もちろんです。
今回は厳選した3つの事例を紐解きながら、食品製造業界でのM&Aについてさらに踏み込んで解説していきます

丸大食品とトーラクのM&A事例


2020年7月には、丸大食品が「神戸プリン」や「らくらくホイップ」を製造するトーラクの全株式を取得して完全子会社としています。

食品製造業を営む大企業同士のM&Aとして注目を集めた同事例ですが、両社が保有している研究開発力や商品力、販売力をもとにシナジー効果の創出を狙ったM&Aと考えられます。

丸大食品の主力事業であるハムやソーセージといった商品の売り上げは減少傾向にあり、新型コロナウイルスの影響から、レトルトや惣菜といった商品の売り上げが増加しています。

ここでさらなる方向転換を図るべく、好調に売り上げを伸ばしているデザート関連の調理加工食品事業に参入しよう、という同社の展望も考えられるでしょう。

参考:トーラク株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ│丸大食品

オーイズミと下仁田物産のM&A事例

2020年1月には、アミューズメント機器製造や不動産業を営むオーイズミが、「蒟蒻ゼリー」の製造・販売を行っている下仁田物産の全株式を取得して子会社化を果たしています。

オーイズミは「遊」「食」「動」「明」を経営テーマとして掲げており、今回の下仁田物産の子会社化は「食」の拡充にあたります。

オーイズミグループ全体での売り上げは420億円に上っており、同社が掲げる「グループ全体で500億円を売り上げる」という目標を達成する上で、新たな事業の創出は欠かせませんでした。

そこで、新規事業の創出とM&Aによる既存事業の獲得を検討した結果、蒟蒻ゼリーを全国に展開している下仁田物産に白羽の矢が立ったと考えられます。

ゼリー市場は、下仁田物産ではない大手2社の寡占状態にあり、商品次第ではさらなる売り上げの拡大も見込めます。オーイズミグループの大泉会長は、今後は蒟蒻をベースにした新商品の開発にも着手していき、最終的にはレトルト食品や冷凍食品も視野に入れた総合食品メーカーへ発展していきたい、と意気込みを発表。

スケールメリットやシナジー効果の創出を狙った異業種からのM&A事例として、ぜひ参考にしていただければと思います。

参考:株式会社下仁田物産の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ│株式会社オーイズミ

亀田製菓によるマイセンのM&A事例

2019年2月には、新潟の大手食品製造会社である亀田製菓が、福井県の玄米食品会社であるマイセンの株式を90%取得し、子会社としています。

亀田の柿の種を主力とする亀田製菓は、近年高まっている健康志向のブームを察知し、米菓以外の製造を試みてマイセンを獲得。玄米を使ったパンや菓子もラインナップに加えつつ、新たな顧客層の獲得に乗り出しています。

食品製造業は、移り変わっていく顧客のニーズに対応しながら次々に新商品を開発していくことが大切です。主力商品の売り上げに満足せず、ニーズを読み取って異なる商品の取り扱いにも注力していくことが大切である、と示した好事例と言えるでしょう。

参考:亀田製菓、玄米食品会社を子会社化 食品事業を強化│日本経済新聞

食品製造業界でM&Aを行う際に気をつけるべきポイント

編集部食品製造業界でのM&A事例を紹介してきましたが、参考にはなりましたか?

食品製造業オーナー大企業同士でも様々なM&Aが行われていることが分かって、参考になったよ。
実際にM&Aに踏み切る際に気を付けておくべきポイントってあるのかな?

編集部食品製造業でM&Aを行う際には、以下に紹介する4つのポイントを把握した上で取り組んでいただくと、より効果的なM&Aが行えると思います。
一つずつ見ていきましょうか

製造している食品が持つ信頼やブランド力が魅力になる


食品製造業は、他の業種や領域と比べて「顧客が商品に持つ愛着や信頼」が強いのが特徴です。昨今の消費者は特に口に入れるものを厳しく選びますし、自分の趣味嗜好に合ったものを根気よく探します。

また、SNSの普及などによって、異物混入やメーカーの不手際などはすぐに周知されてしまうので、培ってきた愛着や信頼が何よりの魅力となるのです。

これはM&Aによって企業を売買する際にも意識しておきたいポイント。自社の生産している商品はどのような層に人気があるのか、どれくらいの顧客ロイヤリティを獲得しているのか、という情報が企業の魅力と直結しているのです。

企業を譲渡する際はぜひこれらの点を整理し、自社の強みを把握しておくようにしましょう。

受注の予測精度や生産管理体制がアピールポイント

記事の冒頭でもお伝えしたように、食品製造の現場では様々なムダが生じてしまいます。それらを限りなくゼロに近づけるためには、受注の予測を行って在庫や廃棄を減らしたり、生産管理体制を徹底して作業効率を高めたりといった企業努力が欠かせません。

食品製造業界の全体が抱える課題に対して、自社ではどのようなアプローチをしているのか、それがどのようなメリットをもたらしているのか、という点について説明できるだけでも、M&Aにおいては大きな利点となります。

M&Aに臨む前に、改めて自社の企業努力について整理しておくと良いでしょう。

小売と提携したPBの開発などに着手できるか否か

近年は小売業者と提携してPB(プライベートブランド)の開発に注力する企業も多く存在します。

メーカーは複数の小売店と契約し、同じ商品を様々な小売店へ卸しますが、PBは一社と提携しながら商品の企画から開発、生産、販売まで一貫して行う手法を指します。小売と連携しているため売り上げの予測が立てやすく、結果として生産の予測も立てやすいのがメリットです。

近年はこうしたPBの開発にも注目が集まっているので、柔軟に協業できる余地がある企業は、高い評価を得やすいという特徴があります。

食品製造業界で実績のあるM&Aアドバイザーに相談する


食品製造業界でM&Aを行う際に最も重要なポイントは、「実績のあるM&Aアドバイザーに相談する」ことです。どの業種でも言えることではありますが、その領域に特化した経験豊富なM&Aアドバイザーと協力することで、理想に近いM&Aを実現できます。

食品製造業界においては、実績あるM&Aアドバイザーに相談することで、特に以下のようなメリットが得られます。



M&Aアドバイザーの質によってこれらのメリットを得られるかどうかが変わってきてしまうので、M&Aの仲介を依頼する場合は、実績が豊富で信頼できるアドバイザーに依頼することが大切です。

食品製造業界が抱える課題を一挙に解決するM&A

編集部食品製造業界は様々な課題を抱えていましたが、M&Aが成功すればこれらの課題を一挙に解決できることがわかりましたね

食品製造業オーナー自社だけでは解決できない閉塞感が、少し開けた気がするよ。ありがとう

編集部お役に立てたようで何よりです。
M&Aについてより詳しく知りたいことや、不安に感じていることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
M&Aアドバイザーが無料でカウンセリングをさせていただきます


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