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会社清算とは?手続きの流れから税務処理まで

起業した会社のうち1年後に残っている確率は半分程度とも言われています。数多くの会社が最終的に会社清算の道に進むことになります。今回は、会社清算について、具体的な事例と図解をもって徹底的に解説していきます。

会社清算の概要

会社清算を理解するために、まずは押さえておくべき基本的な概要から確認していきましょう。

会社清算の定義

会社清算とは、最終的に会社に残った資産を株主に分配する手続のことです。会社清算を行うためには、初めに会社解散を行う必要があります。会社解散→会社清算の手続を経ることで、株式会社の法人格が消滅します。

会社清算のイメージ

会社清算を行う前に、会社の中に財産以外のものが残っていない状態にしなければなりません。
具体的には以下のようなアクションが挙げられます。
  • 従業員に辞めてもらう
  • 売掛金の回収
  • 買掛金の支払
  • 未払金の支払
  • 銀行等からの借入金の返済
  • 不動産など固定資産の売却

会社の中に財産しか残っていない状況にした後に、株主に財産を分配していきます。分配金額は持株比率に応じて分配していくことになります。例えば、持株比率が100%のオーナー会社であれば全てオーナー経営者に配分されます。持株比率が33.3%ずつ、3名の株主で運営している会社であれば、会社清算により財産を三等分することになります。

現金1億円、売掛金1億円、土地3億円、買掛金1億円、借入金2億円のある会社を清算する場合のイメージ図は以下のとおりです。株主はA株主とB株主がいて、それぞれ持株比率50%とします。



会社清算の種類

会社清算は、以下のとおり3種類のタイプがあります。
  1. 通常清算
  2. 特別清算
  3. 任意清算

① 通常清算

通常清算とは、会社財産を全て現金化し全て債務を支払った後に、会社財産が残っている場合に使える清算です。言い換えると、時価純資産がプラスの場合に適用することができ、債務超過の場合は適用することができません。

② 特別清算

特別清算とは、債務超過の際に利害関係者の申し立てによって開始される清算です。裁判所の監督下で手続が行われて、株式会社のみが対象となる点が特徴です。

株式会社が債務超過の場合、通常清算を行うことはできず、会社清算を行う行うには特別清算しかありません。債務超過で会社清算しようとすると、全ての債権者に満額の資金返済をすることができず、債権者同士で揉めてしまう可能性が高いためです。

債権者保護の観点から、裁判所に監督させることで会社清算プロセスの透明性を高めているのです。

③ 任意清算

任意清算とは、合名会社、合資会社において適用することができる清算です。法的に清算方法が定まっておらず、定款または総社員の同意で財産処分方法を決められる点が特徴です。

会社清算の種類を整理すると以下の図のようになります。


会社清算のメリット・デメリット

会社清算のメリット・デメリットは以下のとおりです。
  • 会社清算のメリット
  • 会社清算後は、法人の運営コストがかからない
  • 会社の中にある財産を株主に配分することができる
  • 会社清算のデメリット
  • これ以上、事業継続することができなくなる
  • 従業員を解雇する必要がある
  • すぐに清算することはできず、法的な手続が必要で時間がかかる

読者会社清算と聞くとネガティブなことをイメージしたのですが、メリットもあるのですね。

編集部はい。休眠会社がある場合には、コスト削減のため会社清算を行った方が良い場合もあります。

会社清算の手続

この章では、会社清算の手続の流れや実務上の留意点など、簡潔に説明していきます。

主な手続の流れ

会社清算手続は、以下のような流れで行われます。
通常清算の手続を例にとっています。
  1. 株主総会の特別決議
  2. 解散・清算人の登記
  3. 債権の届出を求めるための官報公告
  4. 会社清算時の財産目録・貸借対照表の作成
  5. 会社資産の売却と債務の弁済
  6. 残余財産の分配
  7. 株主総会による決算報告の承認(会社の法人格消滅)
  8. 精算結了の登記

会社清算の手続は全て会社法に明確に定められています。
通常の清算は会社法475条~509条、特別清算は510条~574条です。
会社清算手続の漏れがあれば、会社清算人に対して責任追及される可能性がありますので、漏れなく手続を実施する必要があります。

必要な費用

会社清算に必要な費用は、以下の3種類に分類することができます。
  • 登記費用
  • 官報公告にかかる費用
  • 専門家に依頼する費用

会社清算では、解散・清算人の登記で39,000円、清算結了の登記で2,000円の合計41,000円の登記費用が必要です。この費用は会社規模が大きかろうが小さかろうが関係なく、一律でこの価格です。

官報公告にかかる費用は、文字数に応じて変動しますが、約40,000円程度を見ておく必要があります。
東京都で会社解散に関する公告を出す場合、「行数(1行22文字)×3,263円+消費税」となっています。

専門家に依頼する場合、行政書士や司法書士、弁護士などに依頼することが考えられます。相場としては、数万円程度~10万円程度となりますが、専門家によって価格帯がバラバラであるので、しっかりと見極める必要はあります。


必要な期間

会社清算の手続の中で、「③ 債権の届出を求めるための官報公告」の手続は債権者から2カ月間の申し出期間を設ける必要があるため、最低でも2カ月間は必要です。

実務的には、株主総会の招集通知発送や登記手続、財産分配手続など合わせると3カ月以上の期間は見ておく必要があります。

会社清算手続を最短で行いたい場合は、事前準備を整えたうえでスケジュールをしっかりと固めた後に、手続を開始しなければなりません。会社清算の決断から実現まで、すぐにはいかない点は留意が必要です。

会社財産の中で、売却に時間を要する資産、例えば土地などを保有している場合、会社清算に必要な期間は長くなります。資産売却できなければ、残余財産を分配することができないためです。資産売却が困難なケースでは、会社清算までに数年を要するものも珍しくありません。

実務上留意すべき点

会社清算の手続の中で、実務上留意すべき点は3点あります。

① 官報公告が必要であること

会社清算を行うにあたり、官報公告は必ず必要(会社法499条)です。官報公告は誰もが見るようなものではありませんが、他の誰かに会社清算の事実が知れ渡ることになります。会社経営を行っている事を、誰にも話したことがない場合などは留意しなければなりません。

② 通常清算の過程で債務超過が判明した場合は、特別清算に

自社の貸借対照表の純資産がプラスであり、通常清算の手続を行っていたところ、途中で債務超過であることが分かった場合を想定してみましょう。この時、通常清算の手続をこれ以上進めることはできず、途中から特別清算の手続へと切り替える必要があります。すなわち、裁判所が関与することになりますので、通常精算の手続よりも手続がより煩雑になります。

③ 必ず法律に従い手続を進める必要がある

会社清算は、会社法に規定されている手続のため、全ての手続を漏れなく実施しなければなりません。残余財産の方法についても、規定があるため、勝手な分配は許されません。例えば、株主が2人いる場合、1人が残余財産をいらないという申出があったとしても、法的にはきちんと分配しなければなりません。

読者会社を精算するのに様々な手続を経る必要があるのですね。
辞める時はもっと簡単に辞められるのかと思っていました。
なぜこのようにたくさんの手続が必要なのでしょうか。

編集部債権者保護と株主平等原則が理由です。
もし勝手に会社清算できるルールであったら、借金がある状態で簡単に債権者から逃げることができてしまいます。
また、株式会社は株主平等原則があり、残余財産の分配にもきちんとしたルールが必要なのです。


会社清算の税務処理

会社清算の税務処理を、精算する法人自体の税務と、残余財産を受け取る株主の税務に分けて解説します。

法人の税務処理

会社清算を行うにあたり、法人は3回の確定申告を行う必要があります。
  • 解散事業年度の確定申告
  • 清算事業年度の確定申告
  • 残余財産確定事業年度の確定申告

利害関係者が多く会社清算に時間がかかる場合は、数多くの確定申告を行わなければなりません。



解散、清算、残余財産確定の際の確定申告は、基本的には通常の事業年度の確定申告と大きく差異はありません。細かい点で、通常解散、清算、残余財産確定の確定申告は、事業年度が1年に満たなくなりますので、減価償却費などの費目で月額計算が必要な点は注意が必要です。

株主の税務処理

清算法人から残余財産を受領した場合、みなし配当が発生しているかどうかを確認する必要があります。

みなし配当は、以下の計算式により計算されます。

みなし配当 = 残余財産分配額ー資本の払い戻しに相当する金額


株主は残余財産分配額からみなし配当を差し引くことで、株式譲渡対価を計算し、譲渡損益を認識します。

みなし配当と譲渡損益の関係は以下の図のとおりです。



残余財産を受け取った株主において、個人を前提にすると所得税の納税が必要です。税率はみなし配当分と株式譲渡益分で異なっているので注意が必要です。

みなし配当分は、配当所得として総合課税の方式により税額が計算されます。金額が大きければ大きいほど、納税額も大きくなり、最大45%の所得税率となります。株式譲渡益分は、金額の大小は関係なく、一律20%の分離課税方式により税額が計算されます。

みなし配当によって想定しなかった納税が発生しないよう注意が必要です。

読者法人の税務も株主の税務も、通常の配当金や株式売却と比べて複雑に感じます。

編集部そうですね。会社清算は時間もかかるうえ、税務処理も複雑になる場合が多いです。
会社規模が大きい場合は、会社清算を決める前に、顧問税理士などの専門家にきちんと事前相談のうえ進めた方が良いでしょう。


会社清算の実例

この章では、会社清算の事例を3つ紹介します。
全て特別清算の事例です。

ユニカ

ユニカは福岡県福岡市に拠点を置く分譲マンション仲介事業などを営んでいる企業です。2020年1月31日に福岡地裁より特別清算開始の命令を受けています。

負債総額は112億円で、福岡県としては大型の倒産です。ユニカはリーマンショック前の2007年3月決算では200億円を超える売上高を計上していました。

2008年のリーマンショックにて、不動産市況が大幅に悪化し、多くの不動産在庫を抱えるようになり、かつ、新規の資金調達が困難となったことから徐々に収益が悪化していきました。結果として、2016年3月決算では売上高は1億円を下回っており、ピーク時売上から1/200の水準まで減少しています。

湯島

湯島は山形県早川町に拠点を置き、「西山温泉慶雲館」という温泉旅館を経営していました。2019年1月8日、東京地方裁判所より特別清算開始の命令を受けました。

705年に創業した湯島はギネスブックで世界最古の宿に認定されており、過去に武田信玄や徳川家康など数多くの著名人が訪れたと言われています。

特別清算開始前の近年は、競争の激化と積極的な投資が裏目に出てしまったことから、資金繰りが厳しくなったとのことです。負債総額は10億円です。

なお、運営していた慶雲館は、事業譲渡により別会社により運営は継続されています。
慶雲館HP

MT映像ディスプレイ

MT映像ディスプレイはパナソニックの連結子会社であり、ブラウン管事業を営んでいました。2019年2月5日、大阪地方裁判所より特別清算開始の決定を受けています。

2016年3月期売上高は470億円でしたが、液晶との競合激化とそもそもの需要減により経常的な赤字体質になっていました。

負債総額は1,033億円、2018年3月期に債務超過になっていることから、通常の清算は使えず、特別清算を利用しています。

読者負債額が大きかったり、話題性のある旅館が特別清算すると、ニュースでも報道されてしまうのですね。

編集部特別清算は債務超過の場合に利用され、利害関係者も多いです。
負債総額が多いということは、それだけ損をしてしまう債権者が多いということを意味しています。
裁判所が間に入る大がかりな清算であるため、世間からの注目も高くニュースに取り上げられる可能性も高くなります。

読者年間どのくらいの特別清算が行われているのでしょうか?

編集部特別清算は、年に300件程度(※1)で推移しています。
2018年の企業の倒産数は約8,000件(※2)ですので、倒産のうち3~4%程度が特別清算されていることになります。

※1 東京商工リサーチ 「特別清算」企業の追跡調査

※2 東京商工リサーチ 全国企業倒産状況

会社清算以外の選択肢

会社清算を行うためには、官報公告をする必要がある、時間とコストがかかるなどのデメリットもあり、積極的に採用したいものではありません。

この章では、会社清算以外の選択肢として、2つの方法を解説します。
  • 経営再建
  • 会社売却

経営再建

経営再建することができれば、赤字から脱却しビジネスが継続できる可能性が高まります。もちろん、一言で経営再建するといっても簡単なことではありません。

最初に何から手を付けてよいか分からない、といった場合は、自社の数字を改めて整備することから始めるのがお勧めです。自社の経営状態を見つめなおすことで、経営再建のヒントを得られる可能性があります。

自分だけでなく、会計士、税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。数字のプロに相談することで、経営再建の糸口や具体的な提案を得られるかもしれません。

会社売却

会社清算をする代わりに会社売却を行うこともできます。
会社売却のメリットは以下のとおりです。
  • 会社売却のメリット
  • 官報公告が必要なく、第三者に知れ渡ることなく売却することが出来る
  • 自社が消滅せず、第三者に経営が引き継がれる
  • 自社の純資産よりも高い金額で売却できる可能性がある
  • 売却金額が高ければ、会社清算よりも税務上有利になる可能性が高い
  • 会社清算よりも早く経営を手放せる可能性がある

一方で会社売却には以下のデメリットもあります。
  • 会社売却のデメリット
  • 会社売却をしようとしても、売れない場合もある
  • 買い手のスケジュールによって、売却時期が流動的になる
  • 買い手との条件交渉や契約締結など、会社清算よりも専門的な知識が必要である


会社売却のメリットの一つである「自社の純資産よりも高い金額で売却できる可能性がある」点について考えてみましょう。

例えば、自社の貸借対照表において、資産2億円、負債1億円、純資産1億円の状態で会社清算を行った場合、100%オーナー会社であれば税金を抜いて考えると1億円を得ることができます。

一方、会社売却であれば、1億円よりも高い金額で売却できる可能性があります。数多くの買い手候補が集まれば、それだけ自社を高く評価してくれる会社に出会える可能性も広がります。



読者会社売却の有利な点を理解することができました。
会社清算と会社売却でどのくらい税金が変わるのでしょうか。

編集部会社清算によって発生するみなし配当は、金額に応じて税率が変わります。
金額が大きければ最大45%の所得税を納める必要があります。
一方、会社売却の場合、株式売却益に対して一律で20%の税金がかかります。
金額が大きければ、最大25%の所得税率の差異が生じることになります。

会社清算よりも会社売却を選択したいと考えている場合は、M&Aに詳しい専門家に相談することから始めましょう。会社清算は一人でできる可能性もありますが、会社売却は実現までに数多くのプロセスを経ることが必要で、高度な専門知識が要求されます。

スピードM&AではM&Aはもちろんのこと、会計、税務に詳しいアドバイザーが多数在籍しておりますので、お気軽にお問い合わせ頂けましたら幸いです。

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