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M&Aコラム

COLUMN

起業家はM&Aでいくら儲かる!?~ベンチャー企業のエグジット戦略~

ベンチャーを起業する経営者の目的はさまざまですが、そのひとつとしてエグジットがあります。
以前はIPOが中心だったエグジットも現在では様相が変わりつつあり、M&Aで売却する経営者も多くなっています。

M&Aにより、創業して育てたビジネスを売却し、キャッシュを手にしたり、起業家としての経験を重ねたりできます。
また、買い手の大企業も、ベンチャー企業のM&Aには積極的です。

そこで、ベンチャー企業のエグジット戦略としてのM&Aについて、詳しく解説します。

ベンチャーのエグジットとは

ベンチャーを起業した後、創業者にとっての目標のひとつとなるエグジット(EXIT)。
エグジットは、創業者やベンチャーキャピタルなどが投資した資金を「出口」に導き、利益を得ることで、ハーベスティング(収穫)とも呼ばれます。

エグジットの道筋をあらかじめ立てておくことは、創業者たちのモチベーションを高めることにもなるため、事業を躍進させる原動力としての役割もあります。
また、シリアルアントレプレナー(連続起業家)としての道を開くためにも必要な手段です。

これまでベンチャー企業が目指すエグジットは、IPOが一般的でした。

しかし、アメリカではエグジットとしてのM&Aが増えてきています。
日本国内でも、近年は起業してから数年でM&Aを成功させ、創業者が利益を得るケースも増えてきています。

■アメリカでのIPO/EXITの割合の推移

アメリカでのIPO/EXITの割合の推移の図

※NVCA「2017 NVCA YEARBOOK」とVEC(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)のグラフを元に作成

エグジットの手法

エグジットの手法には、IPOやM&A以外にも、さまざまな種類があります。
どのような手法があるのか、詳しく紹介しましょう。

IPO

IPOとは、Initial Public Offeringの略で、新規株式公開、新規上場のことです。
株式市場に上場し、新規で株式を公開・流通させることを意味します。
上場によって知名度や信用が向上することもあり、企業にとっては重要なマイルストーンとしてとらえられます。

また、事業拡大などに必要な資金調達の手段としても用いられます。
一般的に株式の価値が跳ね上がるので、株式を保有している創業者やベンチャーキャピタルにとっての目標でもあります。

ただし、上場準備と維持には、情報の開示や審査などに多大なコストや時間がかかります。
また、インサイダー取引などの観点から株式売却には制約があるため、細心の注意が必要です。

株式譲渡

株式譲渡とは、株式の売買によって経営者を売り手から買い手に移す方法です。
株主が代わるだけで、会社は変わらず事業を継続できます。
そのため、法律や契約の面でも手続きが簡単で、時間もかかりません。

M&A

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、企業の合併や買収のことです。
創業者らが保有する株式を買い手企業へ売却するバイアウトもM&Aです。

IPOと比べ、短期間かつ低コストで資金調達や創業者利益を実現できる手法です。
買い手企業とのシナジー効果によって、企業の成長が見込める利点もあります。

アメリカではIPOより一般的で、ベンチャー企業の大半が選択するエグジット手法となっています。
日本でも近年の件数は、IPOよりも上回る傾向があります。

MBO

MBOは、Management Buyout(マネジメント・バイアウト)の略で、M&Aの手法のひとつです。
一度は上場した株式を、その会社の経営陣や事業部門責任者などの従業員が買い取ることで経営権を取得して、非公開企業として事業を継続させます。

通常はMBOに必要な資金が足りないため、投資ファンドなどから調達します。
納得させなければならない株主が限定的になるため、スピード感のある大胆な改革や中長期的な視点での経営がしやすくなることから、近年増えている経営手法です。

世間を驚かせたベンチャーM&A(売却)

ベンチャーのM&Aは、しばしば大きなニュースとして取り上げられます。
買収額だけでなく、意外な組み合わせが注目された最近の事例をご紹介します。

売り手 買い手 金額
3ミニッツ(女性向け動画メディアほか) グリー(ゲーム開発・運営事業) 43億円
BAKE(リアル店舗型菓子販売業) ポラリス・キャピタル・グループ(投資ファンド) 100億円強
BANK(オンラインサービス) DMM.com(インターネット総合事業) 70億円
クラビス(クラウド記帳ソフト「STREAMED」) マネーフォワード(Fintech事業) 8億円
「Peing - 質問箱」(個人事業主せせり氏運営) ジラフ(中古買取領域事業) 非公開
dely(レシピ動画サービス「クラシル」) ヤフー(ポータルサイト運営) 93億円
ソラコム(IoT/通信系サービス) KDDI(電気通信事業者) 200億円

ベンチャーM&Aのメリット

ベンチャー企業にとってM&Aは、経営者が利益を求めるだけでなく、根本的には事業に理解のある買い手を見つけ、その企業価値を向上させたり、コストを抑えたりするための手法です。
具体的にどのようなメリットがあるのか、確認していきましょう。

IPOより低コスト

上場するには、内部統制や国際会計基準などを含め、厳格な管理が求められます。
さらに、社内人材の確保のほか、監査法人や証券会社に報酬を支払う必要があります。

さらに、上場後も経営体制を維持するには、年間で億単位のコストが必要だとされています。

レンタルビデオ事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、MBOによって上場を廃止しました。
その目的のひとつは、上場維持に必要なコストが大きいことが、経営面での課題だったと説明しています。

大規模な投資が可能

ベンチャー企業が資金の投資によって必要な事業を展開したいと考えても、資金が不十分なことが少なくありません。
そこで、みずからが大企業グループの傘下に入ることで、大資本の力を利用して必要な投資をすることが可能になります。
この目的でベンチャー企業を大企業に売却する場合、経営は引き続き任されることが一般的です。

従業員が安心できる

ベンチャー企業の創成期は、リスクを取ってでもチャレンジングな環境を求めるメンバーで構成されています。
しかし、組織の規模が拡大するにつれて従業員は多様化し、リスクを受け入れられる者だけではなくなってくるものです。
大企業の傘下であれば安定感が増すため、安心して働ける環境を売りにして採用を拡大し、優秀な人材を定着させることができます。

管理業務を強化できる

ベンチャー企業は、まずは製品やサービスの開発と販売へのリソースを最優先します。
そのため、人事制度や管理業務の整備は不十分なまま、後回しになりがちです。
大企業では管理業務にも目が行き届き、ノウハウも蓄積されているので、グループに入ることで管理業務の整備を図ることができます。

M&Aに向いているベンチャー企業の特徴

買い手から高く評価され、M&Aによって発展できるベンチャー企業には特徴があります。
M&Aを成功させるには、そのポイントをよく認識しておくことが重要です。

将来性がある

事業に将来性があり、成長が期待できる市場のプレーヤーなら、買い手の大企業にとっては歓迎すべきことであり、M&Aの対象として強く興味を持たれます。

また、大企業では生み出すのが難しい新たなビジネスのアイディアや技術を持っている場合も、それを素早く買い取ろうという思考が働きます。
現時点では利益が十分確保できていなくても、成長が見込めるのであればM&Aの対象となります。

魅力的な商品・サービスで利用者がいる

優れた販路や顧客を持つ場合も、M&Aの対象として高く評価されます。
ベンチャー企業と大企業では、顧客の属性が異なることも多いため、特に若い世代の新たな顧客にリーチできることは魅力となります。

また、IT系ベンチャーは、無料でサービスを提供することで、顧客をたくさん抱えていることがあります。
収益は上がっていなくても、潜在顧客をまとめて手にできることが、大手企業にとって買収する動機になっているのです。

優秀な人材がいる

ベンチャーは、リスクを取ってでも自分の能力で勝負しようという優れた人材を擁しているものです。
大企業では、このような人材をなかなか採用できないため、優秀な人材を一気に獲得する上でもM&Aを検討しています。

ベンチャーM&Aの価格算定方法

M&Aに際して、ベンチャー企業の金銭的な価値、つまり売却額はおもに2つの手法で評価されます。
その価格算定の方法も事前に理解しておきましょう。

DCF法

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、「割引キャッシュフロー法」とも呼ばれる方法です。
将来生み出すであろうと期待されるキャッシュフロー全体の額を求め、そこから現在の企業価値を算出します。

高い成長を前提とするベンチャー企業を評価する方法としては優れていますが、その一方で主観的になりがちな点もあるので注意が必要です。

DCF法を用いるには、将来を高い精度で見定める必要があるため、評価に耐えうる事業計画や情報の開示が求められます。

マルチプル法

マルチプル法は「類似会社比準法」とも呼ばれ、その名のとおり対象企業に類似した会社を複数選定し、それを基準にする手法です。

実際にビジネスを継続している会社を参考に、事業内容、事業規模、財務状態などを軸に比較します。そのため、DCF法に比べて客観性の高い評価が行え、企業価値の算出も簡単にできます。

ただし、精度の高い評価を下すには、ふさわしい類似企業を選定することがポイントですが、ベンチャー企業は先駆的なビジネスを手掛けていることもあり、参考にする企業を見つけられないこともあります。

将来のために自社の企業価値がどれくらいか意識しよう

ベンチャー企業は、創業から間もないフェーズには、事業の立ち上げや会社を軌道にのせることに注力していて、エグジットは少し先の話だと感じることもあります。
ベンチャーを起業した目的も、エグジットではないかもしれません。

しかし、事業を効率的で有利に拡大する手法として、早い時期からM&Aを選択肢に加えて、先々を見据えておくことは、経営者として必要なことです。

そして、まだM&Aのフェーズにはないと思っていても、買い手がどのくらいの買収額をつけてくるのか、他のM&A事例も参考にして注意を払っておくことをおすすめします。

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