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黒字倒産はなぜ起こる?理由から対策までをわかりやすく解説

「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあると思います。
なぜ、黒字なのに倒産してしまうのか不思議な気持ちになるかもしれません。
今回は、黒字倒産について具体的な事例と図解を用いながら、基礎から徹底的に解説していきます。

黒字倒産とは

黒字倒産について解説する前に、まずは倒産の概念を抑える必要があります。この章では、倒産、黒字倒産の基礎的な知識をおさらいしていきます。

倒産とは

倒産は、正式には法律用語ではありませんが、企業が債務の支払ができなくなったり、経済活動ができなくなった状態を意味します。東京商工リサーチが、1952年から「全国倒産動向」の集計を開始したことで一般的に知られるようになった言葉です。

全国倒産動向によると、2019年1月~12月の期間では8,383件でした。なお、このデータの倒産は負債総額1,000万円以上を対象としています。

2019年(令和1年)の全国企業倒産状況: 東京商工リサーチ

黒字倒産と通常の倒産の違い

黒字倒産も通常の倒産も、どちらも「倒産」である点については共通しています。違う点は、倒産した企業が黒字か否かという点です。

通常の倒産は、赤字が数年継続し、徐々に経営悪化することで借入金が支払えなくなったり、従業員の給与が支払えず会社運営することができなくなったりします。

一方、黒字倒産は、黒字が出ているにも関わらず、倒産してしまう点で通常の倒産とは大きく意味合いが異なります。

読者黒字倒産する会社がある一方で、赤字であっても存続している会社は世の中にはたくさんあるのはなぜでしょうか。

編集部赤字であっても、資金繰りに問題がなければ会社は倒産することはありません。
たとえば子会社が長年赤字続きだったとしても、親会社が永久的に資金提供を続けていれば倒産の心配はありません。
オーナー会社でも、たとえ会社が赤字だったとしても自身のお金を増資や経営者貸付金により資金注入することで、資金繰りが回せてしまいます。

黒字倒産になる理由

黒字倒産になる理由は、「資金繰り」です。たとえ損益計算書上では利益が出ていたとしても、明日支払期限のものが払えなければ、それだけで倒産してしまうことがあります。

損益計算書の利益と会社の資金繰りは、似ているようですが数字は異なります。たとえば、商品を販売し1カ月後に代金が入金される場合を考えてみましょう。売上として計上されるタイミングは商品の販売時点ですが、実際に現金が入ってくるのは1カ月後です。

商品の販売タイミングで何かしらの費用を支払う必要がある場合、手元にお金がなく、1カ月後に商品代金が実際に入金されるのを待たなければなりません。

このような状況の継続、または悪化することで徐々に資金繰りが苦しくなり、結果として黒字倒産に陥ってしまうのです。

下記の図のように、通常、入金や支出のタイミングが売上・仕入でそれぞれ異なるため、入出金のタイミングが大きくズレることで黒字倒産になることもあります。


黒字倒産になりやすい会社のイメージ

黒字倒産になりやすい会社は以下のような特徴があります。

・手元資金が少ない
・売上の入金タイミングが遅い
・仕入や費用の支出タイミングが早い
・売上の大半が特定の顧客に集中している
・多額の借入金がある


貸借対照表のイメージ図は以下のようなものとなります。



また、貸借対照表のバランスが以下の状態の会社も注意が必要です。

・流動資産に比べて固定資産が多い
・流動資産<流動負債となっている
・滞留している流動資産がある


流動資産が少なく固定資産が多い場合、即時にキャッシュ化できる資産が少ないことを意味しています。固定資産に計上されるものは、建物・土地・車両や無形資産であり売却に時間がかかります。

流動資産<流動負債の状態は、一時的には流動負債を支払う余力がなく、資金融通をしなければならないことを表しています。もちろん、流動資産、流動負債の中身次第ではありますが、注意しなければならない貸借対照表と言えます。

また、多額に流動資産があるからといって安全とは限りません。長期に渡り残高に変動のない流動資産科目がある場合、滞留していて回収可能性がないかもしれません。滞留している流動資産は換金価値が著しく低くなっており、流動資産とはカウントしない方が良いでしょう。


読者「なぜ売上の大半が特定の顧客に集中している」と黒字倒産になりやすいのでしょうか?

編集部特定の顧客が仮に倒産した場合、売上の大半が入金されないこととなります。
特定の顧客からの入金を頼りにビジネスを回しているので、様々な費用を支払うことができずに黒字倒産してしまいます。
大手企業が倒産すると、大手企業に対する売上が大半の中小企業が連鎖倒産してしまう理由と同様です。

黒字倒産したらどうなるか

黒字倒産となると、会社清算をするか、会社再建を行うかの2択があります。それぞれ詳細を確認していきましょう。

会社清算

会社清算とは、会社の事業運営を止め、会社の法人格を消滅させる手続です。会社清算の場合、清算時の貸借対照表を作成し、債権者や株主に残った財産を配分します。

配分の順序は先に債権者となり、それでも財産が残っている場合に株主に財産が配分されることとなります。黒字倒産の場合、利益計上しているものの、支払うべきお金がなくて倒産しているわけですので、基本的には株主に配分されるお金はないケースがほとんどです。

会社再建

会社再建には、任意整理、会社更生、民事再生の3種類の方法があります。任意整理は、当事者同士の話し合いの元、会社を再建させることです。たとえば、負債の支払の一部を免除してもらったり、支払を遅くしてもらいながら、再生の猶予を得ることなどが挙げられます。

一方、会社更生は会社更生法に基づく手続、民事再生は民事再生法に基づく手続であり、どちらも法に従って厳格に手続が定められています。任意整理よりも時間とコストがかかるため、より大規模な再建に適用されることとなります。

会社清算との違いは、法人格が消滅するかしないかです。会社再建の場合は、法人格が存続し、新たなスポンサーとともに経営を再建していく道となります。

倒産後の生活

会社が倒産した場合、仮に借金が残っていたとしても、個人資産が取られることはありません。株式会社のルールは、株主は出資額以上の責任を負わないことになっているためです。

そのため、会社の借入金に代表者個人の連帯保証がない場合には、倒産後であっても通常と変わらない生活を送ることができます。

ただし、借入金などに連帯保証が入っている場合は、倒産後も個人として借金を返済する義務が残ります。他の会社への就職や、新たな事業により利益を得ることなどにより、借りたお金を返済しなければならない点、留意が必要です。

仮に会社倒産により個人として借金を背負ってしまい、返せる見込みがない場合には、自己破産の道もあります。借金が莫大だからと言って一人で悩んだりせず、弁護士や司法書士など詳しい専門家に早めに相談することが大切です。

読者黒字倒産の場合と通常の倒産の場合で、何か異なることはあるのでしょうか。

編集部黒字倒産の場合、たまたま資金繰りが付かずに倒産するなど、経営状態がそこまで悪くないケースも想定されます。
将来の経営改善が図れる可能性が高ければ、会社清算よりも会社再建の方向に進む可能性も高まります。
通常の倒産よりも、黒字倒産の方が会社を立て直しやすいといった違いがあります。

黒字倒産の事例

上場企業の黒字倒産事例を2点紹介していきます。
  • 江守グループホールディングス
  • アーバンコーポレーション

江守グループホールディングス

江守グループホールディングスは、1906年創業の福井県に拠点を持つ化学品等を扱う卸売業を営んでいました。2011年3月決算から2014年3月決算まで10億円程度の利益を計上していましたが、2015年4月には民事再生法を適用し、黒字倒産しています。

黒字倒産の理由は、「売上の架空計上」です。中国の連結子会社が、社長の親族の経営する会社へ架空売上を計上する取引を行い、実際には代金の回収がなされていない状態でした。

黒字倒産前の江守グループホールディングスの貸借対照表は以下の図のとおりです。



上記の売掛金・受取手形の657億円中、数百億円規模の架空取引があったとしています。

江守グループホールディングス 有価証券報告書

江守グループホールディングスでの学びは、いくら売上を計上していても、代金を回収していなければ全く価値がなく、黒字倒産してまうという点です。長年未回収であった売掛金が多額に溜まってしまい、負債が払えない状態に陥ってしまったのです。

アーバンコーポレーション

アーバンコーポレーションは、1990年設立、不動産関連事業を営んでいました。黒字倒産直前の2008年3月期の有価証券報告書では、売上高2,437億円、営業利益696億円、当期純利益311億円を計上しており業績は好調に見えました。

しかし、5カ月後の2008年8月にはアーバンコーポレーションは東京裁判所に民事再生法の申請をすることになります。理由は黒字倒産です。

2008年3月期のアーバンコーポレーションの貸借対照表は以下のとおりです。



アーバンコーポレーション 有価証券報告書

上記から分かることは、アーバンコーポレーションの黒字倒産の理由が、棚卸資産にあることです。仮に棚卸資産がすぐに資金化できるのであれば、有利負債を返済することができます。

しかし、建築偽装に伴う建築基準法改正の影響により不動産市況が冷え込む中、棚卸資産の資金化が徐々に難しくなっていきました。また、アーバンコーポレーションと反社会的勢力との関係が疑われたこともあり、銀行からの追加融資もストップしてしまいました。

不動産のようにすぐに在庫の処分が難しい商品を扱っている場合、資金繰りには要注意ということが分かります。在庫処分までのリードタイムと難しさを考える必要があるのです。

読者上場企業でも黒字倒産するものなのですね。
財務諸表を見る際に注意するべきポイントはありますか?

編集部2点あります。一つ目は貸借対照表のバランスです。
異常に売掛金や在庫が大きい場合は要注意です。
また、借入金などの負債の額に対して、すぐに換金できる流動資産が少ない場合も問題が生じやすいと言えます。
二つ目は損益計算書だけでなく、キャッシュフロー計算書も確認することです。
黒字倒産する会社は利益がたとえ出ていたとしても、営業キャッシュフローがマイナスとなっている場合がよくあります。

黒字倒産への対策

黒字倒産への対策方法は数多くありますが、主要な対策として以下の6つが挙げられます。それぞれ詳細を見ていきましょう。
  • 入金サイクルを早くする
  • 出金サイクルを遅くする
  • 利益だけでなくキャッシュフローを把握する
  • 資金調達
  • 利益率の改善
  • 負債を少なくする

入金サイクルを早くする

入金サイクルを早くすることで手元キャッシュを厚くすることができ、将来の支払に備えることができます。たとえば、現在月末締め・翌々月末に代金を回収しているのであれば、月末締め・翌月末に代金回収することが考えられます。

もちろん、入金サイクルを早めるためには、お客様との交渉が必要です。ただで入金サイクルを早めることは難しいため、早く支払ってもらった場合は一定程度の割引を行うことなどが交渉材料となります。

究極的には、前受ビジネスが最も黒字倒産の対策には有効的です。前受ビジネスとは、1年間の定期購読のように、1年分の代金を先に回収し後から1カ月ごとに商品の発送や役務提供を行うビジネスモデルです。

出金サイクルを遅くする

出金サイクルを遅くすることができれば、資金を貯める余裕ができ、将来の突然の出費にも耐えられる余裕ができます。入金サイクルの話と同様に、出金サイクルを遅くする場合も、仕入先などと交渉をする必要があります。

通常よりも多く仕入れるなど、こちら側に交渉材料があれば先方も条件を飲んでくれるかもしれません。相見積もりを取る際に、金額だけでなく出金サイクルも交渉材料とすることも効果的です。

また、細かい出費の場合、現金出費よりもなるべくクレジットカードを利用することで、出金サイクルを約1カ月程度後ろ倒しすることができます。

銀行から融資を受けている場合、様々な対策をしてきたにも関わらず、資金繰りが付かない場合は、銀行と交渉することにより返済日を遅くしてもらうことも最終的には検討しなければなりません。

利益だけでなくキャッシュフローを把握する

普段から損益計算書上の利益だけでなく、キャッシュフローを把握することが大切です。大企業では「キャッシュフロー計算書」の作成が義務付けられていますが、中小企業においては、そこまでの必要はありません。

日次資金繰り表(日繰り表)と呼ばれる現金の収入と支出が分かる表で十分です。むしろ、中小企業のオーナーは、損益計算書よりも日繰り表の方を重視して確認している場合が多いかもしれません。

損益計算書上で利益が出ているからといって安心せず、利益の質はどうか、きちんと代金回収できるのか、資金繰りに問題はないか、売掛金の未回収が発生した際に余裕のある現金が準備されているかといった事を、日々の経営の中で確認するようにしましょう。

資金調達

手元資金に余裕があれば、黒字倒産することはありません。手元資金に余裕がなければ、資金調達の必要性を検討しなければなりません。資金調達には、借入と増資の大きく分けて2通りの方法があります。

借入と増資は、余裕資金を作れる点では共通しているものの以下のメリット・デメリットがあります。



借入と増資のどちらが良いか、一長一短がありますので慎重な検討が必要です。

利益率の改善

黒字倒産対策の中でも最も本質的なものが、「利益率の改善」です。利益率が改善することで、イレギュラーな事態が発生した時にも対処がしやすくなります。

利益率が良いビジネスは、コンサルタント業のように主な費用が人件費のみのビジネスが挙げられます。たとえ、取引先からの入金が一時的に止まってしまったとしても、費用が少ないため耐えられる可能性が高まります。

利益率が悪いビジネスは、薄利多売が基本となる卸売業のようなビジネスです。仕入を繰り返さなければ事業が回らず、少しでも歯車が狂ってしまえば、入出金のズレが生じやすく黒字倒産のリスクが高まってしまいます。

負債を少なくする

極端な話ですが、負債がゼロであれば黒字倒産することはありません。会社を倒産させることのできる債権者が存在しないためです。

負債を少なくすればするほど、黒字倒産のリスクを低くすることができます。たとえば借入金の期限前返済です。銀行から融資を受ける際、期限までの一括返済や月々に一定額返済していく約定弁済などの返済パターンがありますが、期限が来る前に一括で返済できる場合があります。

借入金を返済してしまえば、金利も節約することができ、会社の財政状態を筋肉質にすることができます。一方、借入金を返済すること=手元現金が減ることなので、余裕資金がある時に考えるべきアクションという点は留意が必要です。

読者主要な6つの対策は理解しました。
他にも黒字倒産に有効な対策は色々あるのでしょうか。

編集部はい、数多くあります。
たとえば、固定費の変動費化も挙げられます。
固定費は家賃、人件費のように毎月固定で発生する費用です。
固定費を変動費化することができれば、売上が少ない月の費用を簡単に抑えることができます。
オフィスを解約して在宅勤務体制にする、正社員でなくフリーランスを活用するといったことが考えられます。

会社・事業の整理で、黒字倒産をさせない

今回は「黒字倒産」に焦点を絞って、具体事例を交えながら解説してきました。黒字倒産になってしまう理由は、キャッシュフローが回らないことです。キャッシュフローさえ回ってしまえば、赤字であっても存続している会社は山ほどあるのです。

また、上場企業でも黒字倒産はあり得えることも解説しました。
投資家目線では、財務諸表を確認する際に損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書を確認することが大切です。

経営者目線でも、急な取引先の倒産や大きな出費など、会社経営をしている中で黒字倒産のリスクは常に存在しています。普段からキャッシュフローを重視した経営を行うことがポイントです。

黒字倒産のおそれがある場合、税理士や会計士に相談し、キャッシュフローの改善を行いましょう。M&Aによる会社や事業の譲渡を検討することも大事です。

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